第一話 誓約
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結果を伝えよう。
あの後何度も練習を繰り返した結果、十回中七回は失敗していた。
がっくりと肩を落とす沙羅。
「落ち込んでる場合じゃないわ。急いで完成させなきゃ……」
決意をもって顔を上げる。
「黒死牟………」
思わずその名を口にしていた。
他人が聞けば、呪詛にしか聞こえないだろう。
そんな怨嗟の籠もった声音だった。
そしてーー遠巻きにそれを見詰めている碧色の瞳に、この時の沙羅は気付く由もなかった。
朝の自主鍛練を終えた沙羅は風呂場で汗を流していた。
こんな時間からもくもくと風呂を沸かし始める訳にもいかないので、当然水風呂だ。
バシャッと頭から冷水を被り、ガチガチと歯を鳴らす。
「寒っ……!」
しかしながらこれぐらい、耐えてみせる……!
全ては推しを救う為だ。
そう自らに言い聞かせながら、水浴びを手早く済ませた。
「師範……?」
水浴びを済ませて台所へ向かうと、そこには既に無一郎の姿があった。
たすき掛けをして何やら鍋に向かって調理をしている様子に沙羅は慌てて腕捲くりをしながら隣に並ぶ。
「味噌汁と米の準備は済んだから」
「え……!」
「他はお願い」
「………分かりました。すみません、明日からはちゃんと私がやりますから」
「いいよ。これぐらい」
「いいえ。私がやります」
「何でそんなに頑ななの?」
「頑なですか?」
「頑なだよ」
「緊張しているのかもしれません」
「緊張してるの?そんな風には思えないけど」
「そういう事にしておいて下さい」
「…………」
さらっと笑って朝食のおかずの準備に取り掛かる沙羅。
無一郎は何か言いたげに沙羅を見ていたが、すぐに踵を返して台所を後にした。