第八話 無限列車
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ーーにわかに車内が騒々しくなった。
遠く聞き覚えのある声がする。
……来たか。
沙羅は静かに立ち上がると煉獄の隣を退いて、向かいの席に腰掛けた。
煉獄は牛鍋弁当に夢中で、大して気にした様子もない。
あの戦いが、今始まる。
沙羅はゆっくりと瞳を伏せて、深く息を吐き出した。
すうっと瞳を開く。長い睫毛の奥で蒼色の瞳は、静かな闘志を宿らせていた。
「うおおおお!!腹の中だ!!主の腹の中だ、うぉおお!!戦いの始まりだ!!」
「うるせーよ!!」
身体全体を使って無邪気にはしゃぐ伊之助を、善逸が必死に嗜めている。
その傍らで炭治郎はお婆さんの荷物を棚に上げるのを手伝ってから、炎柱である煉獄杏寿郎に会うべく彼のいる車両を目指した。
「柱だっけ?その煉󠄁獄さん。顔とかちゃんと覚えてるのか?」
「うん。派手な髪の人だったし、匂いもちゃんと覚えているから、だいぶ近づいてーー」
前の車両へと続く引き戸を開けた瞬間、
「うまい!」
至極快活な声音が車内を揺るがせる。
うまい、うまいと断続的に響く声を辿って近づけば、座席の背凭れ越しに赤みがかった金髪が見えてくる。
炎を思わせる髪の色だ。
さらに近づくが、彼は気付いたふうもなくひたすら弁当を行儀よく口に運びながら「うまい!」を連呼している。
「あの人が炎柱」
善逸がドン引きした様子でそっと耳打ちしてくる。
「うん……」
「ただの食いしん坊じゃなくて?」
「うん……」
答えつつ炭治郎も内心では若干引いていた。
「うまい!うまい!」
「あの……すみません」
「うまい!」
「れ、煉󠄁獄さん……!」
「うまい!」
「あ、もうそれは、すごく分かりました」
すん、と鼻を動かした。
鼻腔に漂うのは、どこか透明感のある、ほんのりと甘くて上品な花の香り。
人工的な香りではなく、生花のような瑞々しく澄んだ香りだ。
一体どこからーー香りのする方へと視線を向けると、煉󠄁獄の向かい側の席に、一人の少女が静かに腰掛けていた(まるで気配を感じなかったので少々驚いた)。
黄味がかった電灯を反射して、亜麻色の髪が淡く輝いている。
炭治郎の視線に気づいたのか少女は此方を向くと、軽く会釈をした。
透けるような白い肌の、綺麗な少女だった。
目鼻立ちのくっきりとした顔立ちをしており、顔が小さく、鬼狩りをしているとは思えないほどに華奢で、膝上丈のスカートから伸びる脚はスラリとして長い。
その容姿は少しばかり日本人離れしているように思えた。
煉󠄁獄に自己紹介を済ませてから、少女の方にも同じように。
「竈門炭治郎です。こっちは我妻善逸、」
「嘴平伊之助だ!」
少女は炭治郎より少しばかり年上に見えたので、敬語を使う。
すると少女もまた自己紹介をしてくれた。
「私は有須沙羅。貴方の噂は予々伺ってるわ。同じ年のはずだから、敬語はいらないわ」
少女の声音は、異国の人形めいたその容姿にぴったりの、甘く澄んだ声音だった。
「そうか。分かった。沙羅は大人っぽいんだな」
炭治郎が朗らかに微笑うと、沙羅もまた微かに笑顔を返してくれた。
その表情が、僅かに強ばっているのが気になった。
極度の緊張と、警戒の匂いがした。