第八話 無限列車
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ーー序
お母さん
夕莉子姉ちゃん
絵梨花
ごめんね……
ごめんなさい
あの子の最期の言葉はとても短かった。
もっと他に言いたい事があったんじゃないの?
何でも聴いてあげるのに。
……欺瞞だ。今さらそんな事を言っても遅いよね。
もっと話をすればよかったんだ。
私の方こそごめんなさい。
ーー目が覚めると泣いていた。
何の夢をみていたのかまでは思い出せない。
布団の上に身を起こし、寝間着の袖で涙を拭った。
泣いている暇はない。期限は刻々と迫っているのだ。強くならなければいけない。
微かに風が吹いている。時刻は夜半を少し過ぎた頃。
月灯りが障子を透かして壁を蒼白く、畳を青磁色に染めている。
手早く布団を片付けて部屋を出ると、身支度を整えしっかりと佩刀し、沙羅は鍛錬へ向かった。
鍛錬を終えて朝餉の支度をしていると、沙羅の師事する時透無一郎が台所へ現れた。
「おはようございます、師範」
「おはよう」
ふと視線を感じてそちらを向けば、ぼんやりと虚ろな淡い碧色の瞳が、じっと沙羅を見つめていた。
「どうしましたか?」
堪りかねて尋ねると、
「沙羅……君、ちゃんと寝てるの?」
無一郎の指摘に内心ぎくりとし、しかし表面上はポーカーフェイスを保って尋ねる。
「そんなに酷い顔をしていますか?」
「顔はいつも通りだよ。だけどうっすら隈ができてる」
指先で前髪を掻き分けて、沙羅の顔を覗き込んでくる無一郎。
沙羅はすかさずスイっと離れ、にこりと隙のない笑顔を作る。
「よく見ていますね。さすがです」
「茶化さないで答えなよ」
「睡眠はとっています」
「二、三時間はね。だけどこっそり自主鍛錬してるのを僕が知らないとでも思ってるの?」
「……では今夜は鍛錬をお休みする許可を頂けますか?少し出掛けたいんです」
「いいけど……何処へ行くの?」
この質問に対し、沙羅は再びにこりと笑顔を作りーー
「内緒です」
ーーある噂が耳に届いている。
汽車で四十人以上の人間が行方不明となっている。
数名の鬼殺隊士が派遣されたが、帰還した者はいない。
そうして炎柱である煉獄杏寿郎が、今夜出向くのだという。
恐らくこれが“無限列車”と見て間違いないだろう。
始まるのだ。
あの戦いが。
沙羅は俯けていた顔をすうっと上げる。
蒼の瞳に強い意志を宿して。