第七話 蝶屋敷
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「そうよ……全部あたしがやったのよ。樹里姉を毒殺して、刺したのも、全部……」
ぽつりぽつりと自供し始めた初夏の言葉を、ふいに有須沙羅が遮った。
「それは違います」
初夏が顔を上げ、何かを言おうとするが、それより早く有須沙羅が口を開いた。
「私は樹里さんを殺害した犯人と、密室を作りだし樹里さんの遺体を刺殺へ見せかけようと細工をした人物は、別だと考えています」
「なっ…、何を根拠にそんな……!もういいじゃないっ!あたしが全部やったの!それでいいでしょ!?」
初夏の猛烈な反論に、しかし有須沙羅は首を横へ振った。
「いいえ、それではダメなんです」
初夏が黙ると、有須沙羅はごく冷静な眼差しで全員を見渡した。
「樹里さんの遺体は燃やされ、証拠はほとんど残っていません。
ですのでこれより先は、私の立てた仮説によりあの日何が起こったのかを再現しようと思います」
周囲が息を呑む中で、有須沙羅は静かな語調でその前に、と前置きをした。
「この仮説にはもう1ピース前提が必要です。……そこで、此方をご覧下さい」
有須沙羅が示したのは縄の切れ端だった。
「これは先日まで竹束を束ねていた縄です。計五箇所、つまり五本の縄を使用していた。
その全てが千切れて竹束が崩壊しました。
そこでこれらの製造年月日を調べてみたところ、全て比較的新しいものだった。
一、二本ならともかく五本全てが同時に自然な消耗で切れたとは考えにくい。
明らかに人為的な力が加わったもの……調べてみるとやはり時間経過で切れるよう細工した形跡がみられました」
有須沙羅の話を傾聴していた時透無一郎が、先を促す。
「つまり?」
有須沙羅は一つ頷いて、言葉を続けた。
「竹束は六尺六寸(2m)を優に超えており、それを束ねる縄は一番高い位置で五尺九寸四分(180cm)。この中でそこに細工が出来る人物は一人しかいません」
有須沙羅の言葉に、皆の視線が一斉に此方へと向く。
「真島仁成さんーー貴方です」
静かな声音とともに蒼い瞳が真っ直ぐに此方を見据えていた。
全てを見透かしたような眼差しに、ぞくりと背筋が粟立つ。