第七話 蝶屋敷
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有須沙羅へ促され、蝶屋敷の母屋へ戻ると既に全員が集まっていた。
胡蝶しのぶのみ任務により不在であったが、その他の蝶屋敷の住人、栗花落カナヲ、神崎アオイ、寺内きよ、高田なほ、中原すみ。
仁成の幼馴染みである菊池初夏、そして霞柱である時透無一郎までいる。
予感は確信へと変わり、色濃く不安が重たい塊となって喉の奥へつかえ、仁成はやっとの思いでごくりと唾を嚥下した。
有須沙羅は極静かな眼差しで全員を見渡して、ゆっくりと口を開いた。
「今回私は真島樹里さんの死の真相について調べていました」
皆が固唾を呑んで見守る中、有須沙羅は動揺の欠片もない冷静な顔つきで淡々と語る。
「その答えを見つけたので、皆さんにお伝えます」
「証拠が見つかったの!?」
すかさず喰いつく初夏の方へと、有須沙羅が静かな視線を向ける。
「これはあくまでも状況証拠に基づく仮説です。物的証拠は、恐らく樹里さんの遺体もろとも全て燃やされてしまいましたから」
「それじゃ話にならないわ!……って、待って、燃やされたって!?」
「その事についても順をおって後程お話します」
尚も初夏が口を挟もうとした瞬間、それを遮るように時透無一郎が沙羅をまっすぐに見つめて言った。
「続けて。沙羅」
霞柱である時透無一郎に言われては、初夏も黙るより他ない。
「感謝します」
有須沙羅は時透無一郎へ頭を下げた。
一行は亡くなった樹里が病室としていた部屋へと移動した。
壁に付着した血液と、無残に黒く焼け焦げたベッドが、そのままの形で残っている。
現場保存のため有須沙羅が蝶屋敷の面々に頼んでおいたのだろう。
「まず当時の状況を整理しましょう。樹里さんの直接の死因は、神経毒パリトキシンによる毒殺。
その上で何者かに背中から刺されていました。恐らくは刺殺の偽装を狙っての事でしょう。
しかしこれは、失血の具合からみても明らかに死後刺されたもの。
そしてこの部屋は扉は愚か窓も全て施錠されていた。蝶屋敷の扉の鍵はこの部屋のものも含めて全て同じ鍵束に纏められてキーストッカーに鍵をかけて保管されている。
つまりは当時、この部屋は密室でした」
有須沙羅は黒焦げのベッドから視線を外し、全員を見渡す。
「神経毒パリトキシンの潜伏時間は、十二時間から二十四時間と長い。
樹里さんの死亡推定時刻から逆算して、神経毒パリトキシンを摂取したと思われる時間帯は概ね予想がつきます。
その時間帯、カナヲさんと真島さんは任務により蝶屋敷を空けていた為この二人は犯人候補から除外していいでしょう」
一人一人、目線を合わせるようにして見渡していた有須沙羅は、最後のひとりーー菊池初夏をひたりと見据え、
「単刀直入に言います。私は菊池初夏さん、貴女を真島樹里さんを殺害した犯人として疑っています」
まるで外部に憚らねばならない耳目でもあるかのように、有須沙羅はワントーン低い声を投じた。