FILE:3 反撃の微笑み
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ーー蟲の呼吸 蝶丿舞 “戯れ”ーー
………見事な剣技だった。
アニメで見る蝶々の群れや水流や炎はあくまでもエフェクトであり、実際にそれらが発現している訳ではないらしい。
だが、澪羽の瞳には確かに見事な蝶々の群れが見えたのだ。
それはとても艶やかで華やかで、夢のように美しい光景だった。
刺突技に特化した、彼女の剣技。
ただ速いだけではない、緩急を付けた銀閃が、窓明かりの月光を弾いて七色に輝いてーーー
また、彼女自身が蝶の化身のように優美で。
目を、心を、ついには動きを奪われて。
………その結果がこれだ。
澪羽は倒れて動かなくなった男へと視線をやった。
「毒を使ったの?」
「いいえ?藤の毒は鬼にのみ有効な毒ですから」
「そっか………」
ひとまずほっと胸を撫でおろした澪羽だったが、それはしのぶが彼女のためについた優しい嘘であった。
「ですので代わりに神経と腱を断っておきました。これでその人は再起不能です」
「え………」
満面の笑顔と可愛らしいポーズでえげつない事をさらりとのたまうしのぶ。
それって笑顔で伝える事ではないような。
どうしよう。この人……怖い。
笑顔になりかけた顔のまま固まる澪羽は冷や汗が止まらない。
「…………それにしても」
気を取り直して。
「どうしてしのぶさんが此処にいるの?」
「追いかけてきました」
「え?あたし、車で来たのにどうやって……」
「そうですね……。少し大変でしたが。追いつけない速度でもなかったので」
「…………え」
その時澪羽の脳裏に那田蜘蛛山でのしのぶの人間離れした動きと移動速度がよぎる。
確かに不可能ではないのかもしれない。
けれど想像すると………ちょっぴり怖い。
本人には口が裂けても言えない本音を抱えて気まずげに少しだけしのぶから目を逸らす澪羽だった。
「さぁ、紫生さん」
ふと気が付けば、眼前に白い手が差し出されていて。
「帰りましょう」
いつの間にか夜は開けて窓明かりが眩しく差し込んでいた。
朝の陽射しに照らされたしのぶの笑顔は優しくて。
そして何より美しかった。