FILE:2 彼女のお仕事
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話は少し前に遡る。ふと気が付くと胡蝶しのぶは見知らぬ街に立っていた。
立ち並ぶ高層ビルや巨大モニター付きの建造物、通りを行き交う車両など、しのぶにとっては初めて目にするものの連続で。
初めは日本である事を疑いもしたが、行き交う人々は皆殆どが東洋系の顔立ちをしていて、ついでに偶に聞こえてくる話し声もれっきとした日本語であった。
此処は一体………。
高い建物に囲まれた風景から見上げる空は狭く、圧迫感すら感じてくらりと目眩を覚えた。
そんな折だった。
「あれ、胡蝶しのぶじゃない?」
「ホントだ、クオリティ凄っ」
そんな声とともに、あれよあれよと言う間にしのぶの周囲にはあっという間に人だかりが出来てしまったのだった。
「アナタ、一人?」
「カナエとかカナヲは?」
「炭治郎とか禰豆子とか」
「冨岡義勇とか!」
………何故、見ず知らずの人間が、私達の事を?
しのぶは白面に浮かべた優美な笑みはそのままに、そっと自身の刀に手を掛けた。
次の瞬間だった。
ふっと別な気配が近付いて来るのを感じた。
そちらに目を向ければ、そこには一人の少女が静かに佇んでいた。
何だか不思議な存在感を放つ少女だった。
そこだけ透明な空気感。
今まで感じた事のない気配だった。
「こんにちは」
気が付けば自ら声を掛けていた。
少女のうるっとした黒目がちの大きな瞳は、無垢で濁りがなく、まるで生まれたての赤子のようで。
酷く印象に残ったのだった。
少女は人々に囲まれて困惑していたしのぶを連れ出してくれた。
目の前でさらさらと揺れる長い髪。彼女からは果実のような、甘く澄んだ香りがした。
そうしてしのぶは少女と話をした。
少女は名を小鳥遊 紫生というらしい。
紫生の話によれば、自分は約100年後の未来の世界に来てしまったのだと言う。
人々が自分や他の仲間達の事を知っていたのは、鬼を倒した英雄として現在も語り継がれているからだとか。
紫生の話を全て信じた訳では無かったが、現実を見るに彼女を頼る他なさそうだというのが現状だった。
………少なくとも今は。
そう考えを巡らせていた頃、紫生が買い出しから戻って来た。
しのぶは一つ溜息をつくと、玄関まで出迎えに向った。