Priere ー金木犀の恋ー〈冨岡義勇義勇長編〉

 
その夜は空が酷く荒れていたのを今でも鮮明に覚えている。
長椅子へ突き飛ばし、乱暴な手付きでその髪を掴み上げ顔を上向かせれば、女は酷く反抗的な瞳で此方を睨み上げていた。


「………何だ、その目は。お前はいつもそうだ。私がどれだけ愛してやっても、恐れ、忌み、嫌う。これ以上何を望む?言ってみろ」


此方がこれ程までに譲歩してやっているというのに、女の応えは。


「………愛ですって?笑わせないで。そんなものは」


本来美しい目元を醜く歪め、ふっと小さく嘲笑い、


「貴方には死んでも分からないわ」


そうして女は続け様にーー


「貴方は“鬼の王”なんかじゃない」


こう言い放った。


「クズですわ」


その瞬間、鬼舞辻無惨の怒りの爆発と共鳴するかのように、窓の外で雷鳴が轟いた。











 
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