第一章
確かに、ピチカが提案した策を選び取るべきだったのかもしれない。
歓迎式典の開始予定時刻は九時。現在の時刻、八時五十分。遅刻するのは確定なのでルーティは急いで駆け込もうなんてことも諦めていた。だって、何処かの誰かが言ってたんだもの。遅刻してからでは急ごうが急ぐまいが結果は同じだって。
誰が言ってたんだっけな。ルイージ?
ひそひそと囁かれるほどではないが街中を歩く際、いやに視線が刺さった。
悪い意味ではないのだろうが、決していい気はしない。注目されるのはどうも苦手なのだ。その一方でウルフはまるで気にしてないような様子だった。宇宙では親分などと呼ばれ子分たちに慕われてきた身だ、これだって可愛い方なのかもな……
考えている間に着いた。足を止めて、見上げる。
天空大都市レイアーゼの中心部に聳え立つ白い巨塔。
――中央司令塔。
自動ドアを潜って中に入るとロビーが少しざわついた。ああ、と納得。
「すみません」
好奇の視線を押し退けるようにして早足で受付へ。
「歓迎式典の件で伺ったのですが」
受付嬢だけは何ら変わらぬ対応を見せた。
「入場チケットはお持ちですか?」
ルーティは素直に手紙の中からそれを取り出し、差し出す。
「……はい。では係りの者がご案内致します」
受付嬢が言うと決まったスーツの男性が現れて一礼した。
「会場はこちらになります。どうぞ」