第二章-前編-
やれやれ。地面を蹴り出し肉弾戦を繰り広げる妹にネロは息をついた。
と。視界の端に影を捉えて腕を交差させ攻撃を受け止める。此方は空中に留まっていたというのに、仕掛けてきたのはウルフだった。言葉を交わす間もなく押し返すとウルフは後方に回転を加えながら退いて足場に着地――だがその隙を窺っていたのだろう次の瞬間ウルフの左足は蔓の鞭によって絡み取られた。
「ごめんなさいね」
笑み浮かべてひと言告げたその少女、シフォンはぐいと鞭を引いて。
「余計だったかしら」
どいつもこいつも。
「っと」
ネロは飛んできた蹴りを躱すと後方に距離を取って胸を反り大きく息を吸い込み口から灼熱の炎を吐き出した。ふわりと炎の柱を舞うように半円描いて躱した直後に潜り抜けて虚空を力強く蹴り出す。拳を構えて突っ込んできたのはリム。
何処もかしこも。
「――上等じゃねえか!」
バトルルーム。
乱闘が始まると皆がモニターに目を奪われていた。
あんなに楽しそうに笑って、はしゃいで、ふざけ合っていたのに。
「……これが」
ロックマンはぽつりと呟いた。
「戦士……」