第二章-前編-
次の瞬間。ピチカの真横を鳴き声を上げて青の雷撃が駆けた。
髪が靡いて息つく間もなく。風を切り、目の前に。
――始まった。
「っと」
突き出された拳をピチカは難なく受け流した。そのまま腕に両手を置いて、くっと押し込むように重心を乗せる。前方に倒れかかるその人の体をひょいと前転で跳び越えたが更に跳躍、元居た足場のその上に浮かぶ別の足場へ。
体勢を崩されたその人も、崩された次の瞬間には前転の姿勢に切り替え、更に隙を突いて攻撃されることも予測して撃退すべく蹴り上げるように脚の流れは力強く。
そのまま二、三度の前転で距離を離して、その人はピチカを見上げた。
「ああ、びっくりした」
金色の髪を払う。
「ガールズトーク中は反則だよ?」
両手を後ろに回してピチカは笑み。
「おにぃ」
その人は短く息をついて。
「顔色ひとつ変えずに受け流しておいてよく言うよ」
構え直す。
「……ピチカ」