第十二章
……!
「拒否権はないけど」
思わず転けそうになった。
「当然だろ。お前たちには何としてでも未来を変えてもらわなきゃこっちが困るんだよ。ボロボロに滅ぼされた世界を支配したって僕たちの理想とは全くかけ離れてるんだし」
クレイジーはふんと鼻を鳴らす。
「征服する相手が変わるってだけの話かよ」
「そう言うなよ、ファルコ」
……あはは。
「同じ未来には辿り着くけどその先が変えられないわけじゃないってことだよね」
それを聞くとクレイジーは溜め息を吐いて。
「一度じゃ理解できない馬鹿なお前たちにこの僕が分かりやすく説明してやる」
例えば。
お前たちはトロッコに乗って一直線のレールの上を走っている。その先で二手に分岐しているけれど進路を変更するレバーは分岐点の手前にあって今いる場所からは絶対に届かない。
ギリギリまで引きつけて、ってのはつまりそういうことだよ。分岐点に差し掛かると同時に、レバーを切り替える。ただし二手あるルートの見分けはつかないだろうね。
この世界は幾つもの未来に分岐しているんだ。白と黒くらいはっきりしたものもあれば青と緑くらい近しく人によっては全く同じものと判断するものもある。軌道変更が出来たかどうかは走り抜けてみるまで分からないって話。
「ローナ。分かったか?」
「な、なんとなく」
クレイジーは続けて口を開く。
「同じ世界が滅びる未来だったとしても仲間が生きているのとそうでないのとだったら。断然前者を選ぶだろ」
でも、と不安げにリュカ。
「どちらにしても犠牲になるのだとしたら」
「最善を尽くせって言ってんの」
呆れたように。
「……それが運命なら見放すつもり?」