第十一章
甘美な誘惑。張り巡らされた蜘蛛の糸。
彼の発言に嘘偽りなど無いのだろう。どれだけ歪んでいようと彼らの振りかざす正義には筋の通った理由が存在するのだ。我儘を押し付けて破滅させようというのではなくただただ純粋にこの世界の未来の為に。
分かってる。それが彼らの正義なんだ。
でも。
「──揺らがないか」
顔を上げた少年の固い意志を宿した双眸に息を小さく吐き出して。
「僕は英雄になんかならない」
「君が重きを置くべきはこれが最後のチャンスかもしれないという点なんだけど」
「それでも」
少年は肌の表面に青の閃光を走らせる。
「僕は──自分の信念を曲げるつもりなんてない!」
ふっと姿勢を屈めて弾丸のように。強く地面を蹴り出して向かう先には。
「ははっ! やってごらん!」
マークは嘲るように笑って見据える。
「喰い殺してあげるよ」
──双眸を紅く染め上げて。
「あははっ!」
不審な点は幾つもあった。ただ確信には至らず届くと信じて正面から訴え続けた。
けど。
「怖気付いたかい?」
目の前に居るこの人は、もう。
「──虫けら!」