第十一章
指先が髪を触れて初めて気付いた。
はたと顔を上げれば其処に。傍らの少女はその万が一を警戒して目を見張らせている。
「やっぱり」
その人はぽつりと呟いた。
「……細いなぁ」
首に掛けていた赤いマフラーを正しく巻いて。
「なにさなにさっ」
遠ざかっていくその人の背を睨み付ける。
「格好なんか付けちゃって──」
「違うよ、ローナ」
影を落としてぽつりと。
「……今のは」
顰めて呟く。
「僕の首を見て言ったんだ」
勘違いなどではなかった。
辻褄が合うのが胸に苦しくて。その後も部屋に辿り着くまで隣を歩きながら彼女も色々とフォローを飛ばしてくれていたのだろうがさっぱり頭に入ってこなかった。
それでも何とか相槌を打ってはいたので心配をより加速させるまでには至らなかったが……
「──本当に行っちゃうからね!」
部屋の前。繰り返し確認を取る彼女に苦笑いがこぼれてしまう。
「何か少しでも引っ掛かるような事があったら僕たちの部屋に来るんだぞ! 絶対だぞ!」