第八章
何故、何もしない? どうして助けない?
こんな状況を目前にしても尚動かない仲間達に普段有り得る筈もない苛立ちが募った。けれど腕を引いて前線に引きずり出す暇があるはずもなく直ぐさま向き直って構える。
「っ!」
次の瞬間。ルフレは謎の力に薙ぎ倒された。
斜め上から降りかかる見えない攻撃は彼女の体を容赦なく地面に叩きつけて転がせる。加えて打ち所が悪かったのか視界がぼやけてしまうというだけでなくなかなか起き上がれずに。
「に、いさ……」
……どうして。私たちが。
戦って。闘って。
それがこの結果だと言うの?
「、兄さん……」
ぽつりと呟いた泣き出しそうな声もぐったりと頭を垂れる囚われの身の兄には届かない。
そうして。
次第に意識が薄れていく中で。
非情にも邪竜を象る黒い影は横たわる彼女を見下しながらゆっくりと口を開いた――