第六章
クレイジーは笑う。
「何って、いわゆる制裁ってやつ?」
その言葉に思わず息を呑んだ。
「僕、嫌いなんだよね。正義だか何だか知らないけどさぁ、僕たちのこと勝手に悪だと決めつけちゃって」
軋む音。
「やってることは同じだろ?」
「や、やめて!」
咄嗟に叫んだが正解だったようだ。音は止んで小さく息を吐く。
「正当化して。自分たちが一番綺麗だと思ってる。鬱陶しいんだよね」
冷たく放たれる台詞にまるで背筋が凍るかのような感覚に襲われる。
「あは、安心して。殺しはしないよ」
その言葉に安堵した直後。
「敢えて生かしておくってことに意味があるんだから」
どくん。
「え、クレイジー?」
電話の向こう側から聞こえる身動ぐ音。
「何を考えて」
「俺の術は器用なものではない」
この声は。
「再生なんてのは不可能だ。それに似た形で同じ物を得るためにはある程度取り除いてやる必要がある……」
小さく呻く声と。
「え」
みしみしと軋む音が遠く。
「やめて、」
さあっと顔を青ざめて叫んだ。
「やめろおおぉおおっ!」