第一章
待て待て。指を切ったという情報はさっきウルフ達と話していたのを盗み聞きしていたのだとしてグラスの破片が原因であるとはまだひと言も喋ってないぞ。
「どうかしましたか?」
肝心のダークファルコはにこにこと相変わらず。
「……まさか」
ルーティは恐る恐る言った。
「会場を襲撃したのって……スピカ達じゃ、ないよね」
すると今まで黙っていたダークウルフが意外なほどあっさりと。
「そうだが?」
暫くお待ちください(ゴッと鈍い音)。
「な、なんで俺だけ……」
暗幕があけるとそこには頭に大きな瘤を据えて屈み込むスピカの姿があった。
「リーダーでしょ」
ルーティは手をはたき、腰に当てて見下ろす。
「全く。スピカがそんな意地悪をするなんて思わなかった」
「“あいつら”の命令だったんだ、しょうがないだろ!」
恐らくマスタークレイジーのことだろう。
「……なんて?」
「初日の緊張した心に恐怖を植え付けて使い物にならなくしてやれって」
二発目。
「だからなんで俺だけ!?」