第三章
普段は透過して肉眼では窺えないようになっているスピカの首に掛けられた黒い首輪は、こうして罰を下される時に容赦なく首を絞め上げる。マスターが愚痴をこぼしたように今回の命令を自分たちではなく正義の側である彼らに丸々任せてしまったのが気に障ったらしい。
「脆弱で無様で」
地面にうつ伏せの姿勢でマスターに頭を踏みつけられるスピカの側に屈み込み、膝の上に頬杖をついて見下す。
「……芋虫みたいだねぇ?」
手出しは厳禁――そうは分かっていても当然のこと見ていられるような光景ではなかった。同行したダークシャドウの三人は跪いた姿勢で静かに視線を落とし、じっとそれに耐えている。
「ま、」
事態に耐え兼ねて。遂にその震える唇をそっと開いたのはダークウルフだった。
「マスター様。クレイジー様」
自分こそ彼らの気に触れてしまわぬよう冷や汗が流れ落ちるのを感じながら。
「そろそろ」
慎重に。
「タブー様のメンテナンスの時間では」
……沈黙が訪れた。
息も詰まるような思いで何とか言葉は紡げたけれど、それで余計に機嫌を損ねてしまっては元も子もない。あの人は自分たちに危害が及ばされないためその身を投げ打ってあの場所にいるのだ。