第三章
……じゃあ。ルーティが小さくこぼすとフォックスは思い返すように眉をひそめながら瞼を閉ざした。
そう……人質の女性が銃を。
重要な情報をどうもありがとう。
……驚いた顔をしているようだがどうかしたのか。
記憶力の低下が著しいようだ。
手遅れのようだな。
「……処分した」
フォックスは緩く拳を握り締める。
「すまない……」
胸が締め付けられるようだった。
「……フォックスが謝ることじゃ」
「なら他に誰が謝るんだ」
口を挟んだのはウルフである。
「奴のやったことは確かに理にかなっている。何も間違っちゃいねえだろうが」
「分かってるよ」
でも。
「ルーティ」
ウルフはゆっくりと口を開く。
「てめえは何ひとつ分かっちゃいねえ」
その瞬間。
周囲の音が途絶えて――まるで真っ白な何も無い世界の中二人だけ残されたかのような感覚に囚われながら。
「正義ってのはひとつじゃない。やったもん勝ちだ。つまりあいつのやってのけたこともてめえのその甘ちゃんな考えも間違っちゃいねえんだ」
それは優しく。
「自分が何処にいるのか思い出せ」
厳しく。
「見失うなよ」
やっぱりこの人の言葉は。
「どんな意志に揉まれても」
いつも。
「……自分だけは」