第三章
冷たい空間に足音が響く。
「ルーティ」
遺体が運び出されていく最中。それから一切言葉を発することもなく顔を俯かせて立ち竦んでいた彼にそっと歩み寄って声をかけたのはフォックスだった。
「あの女の人」
次に言葉が紡がれるよりも先。
「……銃、持ってた?」
目元には暗い影を落として正しく表情を窺わせないまま。静かに訊くルーティにフォックスは目を伏せて答える。
「……ああ」
それは。
死角を逆手にとった狡猾な手段だった。
――指揮隊長が殺された。司令塔からの連絡も無い。加えて国の要である特殊防衛部隊のリーダーまで人質に取られた。
まさに万事休す、といった苦しい状況を打破したのはロックマンだった。
遅かれ早かれ第一級任務に移行する。
なら。今ここでお前たちに厳格な処置というものを下しても問題はないだろう。
明確な命令がないものを身勝手に行動を起こすのは殺生か?……違うな。
これは、正義だ。
いずれ訪れる未来に従って機先を制するだけのこと。……最も。それが正しいかどうかの判断は人によるだろうが。
心配には及ばない。外部への連絡はこう伝わるだろう……第一級任務解放事項に従ってやむを得ず処分した、と。
……何故なら。
異なる意思はここで絶えるからだ。