第三章
……彼の言葉は恐ろしいほど純度の高い正論で反論の余地もなく、結果滞ることなくすんなり頭の奥にまで染み渡った。
緩んだ意志の糸をきつく締め直すのではなく。断ち切る。
正義が正義を濁すのであれば、いっそのこと終わらせてしまえばいい。
納得したんだ。それなのに妙にすっきりとしたこの頭は考えを巡らせるのをやめない。色のない文字列に埋もれた頭の中から何かを漁っている。
……違う。
「……マーク」
それまで同じ位置で、立ち尽くすばかりだった彼の名前をひと声呼んで。
「何故殺さなかった?」
その本人は眉をひそめて口を噤む。
「兄さん!」
遅れて部隊が到着した。
「……やっぱり」
真っ先に駆けつけた兄の姿を見て。
「怪我してる……」
ルフレはそっと手を取る。
「無茶しないでって言ったじゃない」
今にも泣き出しそうにだけど堪えて顔を俯かせる妹に胸が締め付けられる。
手のひらの温もりと。
「……すまない」
様々な感情に揉まれながら。
それ以上は何も言わずにマークはただ、黙っていた。……