第三章
マークは……そこで動きを止めた。
何故とまでは返さなかったが男に左手を差し向け構えたまま浅く息を弾ませる彼の横顔は一筋の冷や汗が流れ瞳孔が細く男ではない虚空を見つめている。
一方で女性は倒れた男を抱き起こすと程なく此方を鋭く睨みつけた。……当然の反応だろう。ルーティはその目に捉えられて一瞬たじろいだが小さく息を呑むとゆっくり足を踏み出して。
「……ルーティ」
気付いたマークがぽつりと呼んだが気に留めることなく彼らの目の前へ。女性は腕の中の男を抱き寄せるようにしながら深く見据えて訊ねる。
「なによ」
色々と言葉に迷うものがある。
でも。
「ごめんなさい」
――今は。
「あなた達の言っていることは正しい、です」
ルーティはゆっくりと語り出す。
「自分たちだけじゃない。この世界の未来や平和を願うその気持ちは他の誰とも変わらないし、だから僕たちは否定することもできない」
それでも。
「……それでも。僕たちは僕たちのやり方を変えることはできない」