第二章-後編-
当然のこと使うつもりはないのだろう。これ、と言いつつ両眼を覆い隠すようにして巻いた鉢巻の隙間に指を通し引いてみせたが直ぐに手を下ろして。
「……何が言いたい」
「視えるもの全てに囚われていたのでは理想には辿り着けないということだ」
リオンはふっと笑みをこぼして。
「最も。ルーティ殿はそれに気付けたようだが?」
背後に影が差した。
「ってめえ」
生きてやがったのかと口に出したいところだったが噤む。それまで崖に掴まっていたルーティは体を揺さぶった反動で高く飛び上がると両腕を後ろに差し出し、手のひらから電気を放出。結果としてそれはジェットエンジンのような役目を果たしルーティの体は流星の如く構えたリオンに正面から突撃――だがしかし当然のように躱されたその先、それまで溜めていた暗い紫色のエネルギー弾をユウが放って。
着地、踏み込んで後転しつつ跳び上がり、回避。ルーティが両手を突き出すと再び手のひらから電気が放出された。青白い光を帯びたそれはうねりながらユウに突撃していくが対するユウはあくまでも冷静に双眸を金色に瞬かせ、発生した薄紫色のバリアで弾き難なく逃れて。
「ウルフ!」
ユウは目を開いた。
「ッ、か……」
視界に黒い影が飛び込んだかと思えばその直後。腹部に重く拳の一撃を受けてユウは跳ね飛ばされた。リオンが振り向いたが着地したルーティがそれを阻み、俊足な蹴り技で対抗して突破を許してくれない。リオンはその時初めて眉をひそめた。