本編
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約束
── 一年後。
十二月初旬の冬日和。悴む手に白い息をかけながら、菊乃は土間の前で右往左往していた。下駄箱の上に置かれた時計に目をやり、時折止まってはまたそわそわと歩き回る。その繰り返し。
「菊乃、ま~だそうしていたのかねッ!入校の説明やらでまだ時間はかかるぞッ」
「だって……」
身体が冷えるから中で待つようにと、父 有坂成蔵から三〇分ほど前に言われたばかりであった。
「もし、もしですよ?不合格だったらすぐに追い出されてこちらへ来るかもしれないじゃないですか」
「あれほど『絶対合格してますッ!』って言ってたのはどこの誰ったかなッ!?」
「うぅ~」
眉間にシワを寄せて唸る。今日は、陸軍大学校の結果発表がなされる日だ。
二日前に届いた鯉登からの手紙──「陸大出頭命令を受けた。恐らく合否通知が行われるだろう」──その知らせを受けてからと言うもの、菊乃は何も手につかないほど気を揉んでいた。
合格を信じている。しかし、万が一ということは何においても起こり得るもの。いざその日を迎えれば、ついそれを想像してしまう。
彼のことを励ましてやれるのだろうか。また一年、会えない寂しさに耐えることは出来るのだろうか──。
そんな不穏な心配事を払拭するため散歩でもしてこようと、菊乃は寒さも忘れ草履をさっと突っ掛けた。次いで玄関扉をガラリと開くと、敷地の入口に立つ大きな松の木の向こうに人影があって、一歩飛び出そうとした足を引っ込める。
暇を持て余したご近所さんが、また「有坂さんのお嬢さんはいつも元気があってよろしい」と小言を言いに来たのか──。先日は、木の上から降りられなくなった子猫を助けるために、よじ登っているところを見られたばかりだ。
菊乃がげんなりしているうちに人影は動き出し、木の陰に隠れていた姿がゆっくりと現れる。その人は、漆黒の長靴に薄茶色の外套をまとっていた。
やがて、目深に被った軍帽を脱いだ瞬間、菊乃は忘れていた息をすぅ、と吸い込んだ。
「──驚いたな。どうして着いた事が分かったんだ?」
微笑んだ鯉登が現れて、菊乃は思わず駆け出した。
しかし、気が散っていたことが災いして、軽く突っ掛けただけの草履はその勢いに負けて片方脱げかける。
「わッ!」
「危ッ──!」
どす、と結構な衝撃で鯉登に体当たりをかました菊乃は、打ち付けた顔面の痛みに思わず悶えた。
「バカすったれ!怪我したらどげんすッ!」
「いぃ……ゴメンナサイ……」
再会早々に怒られ、羞恥で顔を上げられない。草履が片方なくて足元が気持ち悪い。でもそれどころじゃない。
菊乃が心中で悶えていると、鯉登が抱きとめる力をそっと強めた。待ち焦がれていた甘い圧迫に、菊乃の鼓動が強く打つ。
「──合格したぞ」
囁かれた声に、顔面の痛みも忘れ弾かれたように顔を上げる。今の鯉登は、誰が見たって男前だと評するに違いない、その笑顔は晴れやかで凛々しい。聞き間違いじゃない。正真正銘の吉報だ。
「やったー!」
「やったぞ菊乃ー!」
やった、やったと二人して抱き合いながら飛び跳ねていると、
「菊乃ッ!オイと一緒んなってくいやいッ!」
元気はつらつとした声に不意を突かれ、それまできゃっきゃと跳ねていた菊乃が嘘のようにピタリと止まった。
「……え?」
「直ぐじゃない。慣習的なものですまないが、卒業後になると思う。だけどその前に……互いの気持ちを、確かめておきたい」
肩を優しく掴まれ、身体が離れる。視線が交わると、菊乃は自然と両の手を胸の前で握った。
気づけば、世界が二人だけの時間に変わったかのように、不思議と彼の声以外の音が消えていた。
「菊乃が傍にいてくれれば、私はこれからどんな困難があっても立ち向かえる。今度こそ、菊乃を守り抜ける男になると約束する。──じゃっで 、アタイとみとんなって 、いっしょきあるってくいやんせ 」
その言葉が、柔らかく響いて視界が滲む。
菊乃は、涙が溢れてしまう前にゆっくりと淑やかに頭を下げた。
「……末永く、よろしくお願いいたします」
愛はカタチを変えながら、これからも二人の明日を紡いでゆく。
おわり
🧠side story🧠
港は朝靄に包まれ、潮の香りが鼻をかすかに擽った。
濃紺の洋服に身を包み、黒い中折れ帽を深く被る鶴見は、鞄を脇に埠頭の端に立っていた。鉄の舷側が朝日を受けて、薄光を水面に揺らす。遠くには外国の商船が静かに列をなし、異国の空気を漂わせていた。
「やぁやぁッ!どうだったねッ、故郷のコメと水はッッ!」
「お陰様でッ!美味い飯を食べてご覧の通り、ピンピン元通りであります、閣下ッッ!!」
声をかけてきた有坂へ敬礼する鶴見は、声高々に返した。
「兵器局長は交代となったよッ。その後、芹沢の行方は把握出来ていないんだが、必要なら調べておこうかッ!?」
「……いいえッ。それだけ分かれば十分ですッ!」
「案の定、連中は指令文と菊乃の存在に言及したら掌を返してきたよッ!もう私の娘だから互いの利害の為にも──とッ、凡そキミの筋書き通りだッ!」
「滞り無く運んだようで安心いたしましたッ!」
穏やかな波の音が、二人の間を抜けていく。
それから、ふと表情を緩めて有坂が低く笑い、
「しかし、小樽に残していたというあの“手紙”ッ。あれに芹沢を引きずり出す仕掛けがあったとはねぇッ!いやあっぱれッッ!」
「恐れ入りますッ!私も、まさかあそこまで上手くことが運ぶとは思いませんでしたがッ」
それは、彼の策略の一つに過ぎなかった。
手紙を見て魁燿亭へ向かった者が、菊乃と森岡の繋がりを知り、彼の情報を探る。軍歴など照会しようものなら、必ず芹沢は食いついてくると確信があった。──それが、鯉登か月島であれば、確実にその糸を辿るだろうと読んで。
件の騒動で殉職となった今、菊乃のためにも、出来ることなら芹沢を中央から排除させておきたかった。
「森岡くんに頼まれて私が拵えた“鉄板”もなかなか役に立ったみたいでねぇッ!我が人生、これ以上ない仕事をさせてもらったよッッ!!」
「菊乃の命を繋いだのは、閣下と森岡さんのお力添えがあってこそッ!──あぁ、そうでした。私からもう一つ頼みたいことがあるのですッ!……これを」
そう言って、鶴見が差し出した封書を有坂が受け取ると、
「──これは驚いたッ!何処で見つけたんだねッ!?」
「菊乃が思い出したというあの歌──“星ふたつ”が、私へ向けられたものでしたッ!」
鶴見は、森岡と共にあの写真を撮影した場所──故郷新潟の“桜の木”を再び訪れた。木の根元を掘り返してみると、そこから現れた硝子瓶の中に入っていたのが──。
「菊乃の出自について記されておりますッ!」
「……しかし妙だねッ。“アイヌの集落にいた孤児”とはッ!菊乃はアイヌにみられる身体的特徴は持っていないと思うのだがッ!?」
「貧しさ故、和人がアイヌの集落に子を捨てる、なんて話もありますッ。文面から察するに、何かのっぴきならない事情があり育ての親と離れてしまった……そこに遭遇した組織が連れ帰ったのでしょうッ!」
それを聞いて有坂は、手紙の文字を追いながら一つ頷いた。
「その手紙を……菊乃がもし知りたいと望んだときには、どうか渡してやっていただけないでしょうかッ!」
「委細承知したッ!厳重に持ち帰らせてもらおうッ!!」
そう言うと有坂は、手紙を上着の物入れにそっとしまった。
「まッ!そういうわけで養子縁組も無事に整ったからねぇッ!菊乃も喜んでくれたよッ!」
「この度のことッ、菊乃の為に御尽力いただき心より御礼申し上げますッ!」
「いいよぉッ。私も念願叶って娘ができて、毎日賑やかで楽しいしッ!あでもねぇッ、もう『菊乃を嫁にくれ』って言われちゃってッ!困っちゃってんだよねぇッ!」
「なんとッ!何処の不埒者でありますかッッ!?」
「鯉登くんだよッ!!」
その名を聞き届けた瞬間、鶴見の表情は感情が読めないほどに硬くなった。まるで、時が止まったかのように身じろぎ一つせず。
「どうするぅッ?一応キミの意見も聞いておこうかなッ!」
鶴見は、そのまま暫しの沈黙を保っていた。双方、視線を逸らすこと無く、互いの胸の内を探るかのように交わされ──やがて、
「──彼は優秀な軍人ですッ!実直で器量もあるッ。菊乃のことを幸せにできる男だッ。私が保証しますッ!」
「はッはッ!そーかねッ!なら安心だッ!最も、菊乃にはまだ承諾を貰っていないらしいけどねッ。もう少し先の話になりそうだよッ!」
それを聞いて、ふっと漏れるような笑みをこぼした鶴見は、緩慢な動きで身を屈め、足元に置いていた鞄を手に取った。
「思えばそんな歳か……子の成長とは早いものですッ!」
「花嫁姿見たいだろうッ?写真送るから、向こうに着いたら住所知らせたまえよッ!」
鶴見は、黙ってコクリと一つ頷いた。やがて有坂から目を逸らし、遠く洋館の並ぶ街並みへと向き直る。
「……あの子には悪いことをしました……代わりを求めてしまった」
その声は波音に紛れた。
それから、ぼそりと呟いた鶴見の姿を静かに見ていた有坂が、
「菊乃が言っていたよッ。『私にはお父さんが三人いる』とねッ!」
その言葉に目を瞠る。鶴見が振り返り見れば、有坂は満面の笑みを浮かべていた。
「達者でな鶴見くんッ!どうせまた途方もない事を企んでいるのだろうッ!?協力できることがあればいつでも連絡寄越したまえッッ!!」
「はッ!閣下もどうかお元気でッ!!……菊乃のこと、よろしくお願いいたしますッ!!」
朝靄にけぶる景色の中、鶴見の視線は静かに、しかし確かな決意を秘めて、マストにはためく星条旗をまっすぐ見据えていた。
↓読了しましたのポチッあとがき
── 一年後。
十二月初旬の冬日和。悴む手に白い息をかけながら、菊乃は土間の前で右往左往していた。下駄箱の上に置かれた時計に目をやり、時折止まってはまたそわそわと歩き回る。その繰り返し。
「菊乃、ま~だそうしていたのかねッ!入校の説明やらでまだ時間はかかるぞッ」
「だって……」
身体が冷えるから中で待つようにと、父 有坂成蔵から三〇分ほど前に言われたばかりであった。
「もし、もしですよ?不合格だったらすぐに追い出されてこちらへ来るかもしれないじゃないですか」
「あれほど『絶対合格してますッ!』って言ってたのはどこの誰ったかなッ!?」
「うぅ~」
眉間にシワを寄せて唸る。今日は、陸軍大学校の結果発表がなされる日だ。
二日前に届いた鯉登からの手紙──「陸大出頭命令を受けた。恐らく合否通知が行われるだろう」──その知らせを受けてからと言うもの、菊乃は何も手につかないほど気を揉んでいた。
合格を信じている。しかし、万が一ということは何においても起こり得るもの。いざその日を迎えれば、ついそれを想像してしまう。
彼のことを励ましてやれるのだろうか。また一年、会えない寂しさに耐えることは出来るのだろうか──。
そんな不穏な心配事を払拭するため散歩でもしてこようと、菊乃は寒さも忘れ草履をさっと突っ掛けた。次いで玄関扉をガラリと開くと、敷地の入口に立つ大きな松の木の向こうに人影があって、一歩飛び出そうとした足を引っ込める。
暇を持て余したご近所さんが、また「有坂さんのお嬢さんはいつも元気があってよろしい」と小言を言いに来たのか──。先日は、木の上から降りられなくなった子猫を助けるために、よじ登っているところを見られたばかりだ。
菊乃がげんなりしているうちに人影は動き出し、木の陰に隠れていた姿がゆっくりと現れる。その人は、漆黒の長靴に薄茶色の外套をまとっていた。
やがて、目深に被った軍帽を脱いだ瞬間、菊乃は忘れていた息をすぅ、と吸い込んだ。
「──驚いたな。どうして着いた事が分かったんだ?」
微笑んだ鯉登が現れて、菊乃は思わず駆け出した。
しかし、気が散っていたことが災いして、軽く突っ掛けただけの草履はその勢いに負けて片方脱げかける。
「わッ!」
「危ッ──!」
どす、と結構な衝撃で鯉登に体当たりをかました菊乃は、打ち付けた顔面の痛みに思わず悶えた。
「バカすったれ!怪我したらどげんすッ!」
「いぃ……ゴメンナサイ……」
再会早々に怒られ、羞恥で顔を上げられない。草履が片方なくて足元が気持ち悪い。でもそれどころじゃない。
菊乃が心中で悶えていると、鯉登が抱きとめる力をそっと強めた。待ち焦がれていた甘い圧迫に、菊乃の鼓動が強く打つ。
「──合格したぞ」
囁かれた声に、顔面の痛みも忘れ弾かれたように顔を上げる。今の鯉登は、誰が見たって男前だと評するに違いない、その笑顔は晴れやかで凛々しい。聞き間違いじゃない。正真正銘の吉報だ。
「やったー!」
「やったぞ菊乃ー!」
やった、やったと二人して抱き合いながら飛び跳ねていると、
「菊乃ッ!オイと一緒んなってくいやいッ!」
元気はつらつとした声に不意を突かれ、それまできゃっきゃと跳ねていた菊乃が嘘のようにピタリと止まった。
「……え?」
「直ぐじゃない。慣習的なものですまないが、卒業後になると思う。だけどその前に……互いの気持ちを、確かめておきたい」
肩を優しく掴まれ、身体が離れる。視線が交わると、菊乃は自然と両の手を胸の前で握った。
気づけば、世界が二人だけの時間に変わったかのように、不思議と彼の声以外の音が消えていた。
「菊乃が傍にいてくれれば、私はこれからどんな困難があっても立ち向かえる。今度こそ、菊乃を守り抜ける男になると約束する。──
その言葉が、柔らかく響いて視界が滲む。
菊乃は、涙が溢れてしまう前にゆっくりと淑やかに頭を下げた。
「……末永く、よろしくお願いいたします」
愛はカタチを変えながら、これからも二人の明日を紡いでゆく。
おわり
🧠side story🧠
港は朝靄に包まれ、潮の香りが鼻をかすかに擽った。
濃紺の洋服に身を包み、黒い中折れ帽を深く被る鶴見は、鞄を脇に埠頭の端に立っていた。鉄の舷側が朝日を受けて、薄光を水面に揺らす。遠くには外国の商船が静かに列をなし、異国の空気を漂わせていた。
「やぁやぁッ!どうだったねッ、故郷のコメと水はッッ!」
「お陰様でッ!美味い飯を食べてご覧の通り、ピンピン元通りであります、閣下ッッ!!」
声をかけてきた有坂へ敬礼する鶴見は、声高々に返した。
「兵器局長は交代となったよッ。その後、芹沢の行方は把握出来ていないんだが、必要なら調べておこうかッ!?」
「……いいえッ。それだけ分かれば十分ですッ!」
「案の定、連中は指令文と菊乃の存在に言及したら掌を返してきたよッ!もう私の娘だから互いの利害の為にも──とッ、凡そキミの筋書き通りだッ!」
「滞り無く運んだようで安心いたしましたッ!」
穏やかな波の音が、二人の間を抜けていく。
それから、ふと表情を緩めて有坂が低く笑い、
「しかし、小樽に残していたというあの“手紙”ッ。あれに芹沢を引きずり出す仕掛けがあったとはねぇッ!いやあっぱれッッ!」
「恐れ入りますッ!私も、まさかあそこまで上手くことが運ぶとは思いませんでしたがッ」
それは、彼の策略の一つに過ぎなかった。
手紙を見て魁燿亭へ向かった者が、菊乃と森岡の繋がりを知り、彼の情報を探る。軍歴など照会しようものなら、必ず芹沢は食いついてくると確信があった。──それが、鯉登か月島であれば、確実にその糸を辿るだろうと読んで。
件の騒動で殉職となった今、菊乃のためにも、出来ることなら芹沢を中央から排除させておきたかった。
「森岡くんに頼まれて私が拵えた“鉄板”もなかなか役に立ったみたいでねぇッ!我が人生、これ以上ない仕事をさせてもらったよッッ!!」
「菊乃の命を繋いだのは、閣下と森岡さんのお力添えがあってこそッ!──あぁ、そうでした。私からもう一つ頼みたいことがあるのですッ!……これを」
そう言って、鶴見が差し出した封書を有坂が受け取ると、
「──これは驚いたッ!何処で見つけたんだねッ!?」
「菊乃が思い出したというあの歌──“星ふたつ”が、私へ向けられたものでしたッ!」
鶴見は、森岡と共にあの写真を撮影した場所──故郷新潟の“桜の木”を再び訪れた。木の根元を掘り返してみると、そこから現れた硝子瓶の中に入っていたのが──。
「菊乃の出自について記されておりますッ!」
「……しかし妙だねッ。“アイヌの集落にいた孤児”とはッ!菊乃はアイヌにみられる身体的特徴は持っていないと思うのだがッ!?」
「貧しさ故、和人がアイヌの集落に子を捨てる、なんて話もありますッ。文面から察するに、何かのっぴきならない事情があり育ての親と離れてしまった……そこに遭遇した組織が連れ帰ったのでしょうッ!」
それを聞いて有坂は、手紙の文字を追いながら一つ頷いた。
「その手紙を……菊乃がもし知りたいと望んだときには、どうか渡してやっていただけないでしょうかッ!」
「委細承知したッ!厳重に持ち帰らせてもらおうッ!!」
そう言うと有坂は、手紙を上着の物入れにそっとしまった。
「まッ!そういうわけで養子縁組も無事に整ったからねぇッ!菊乃も喜んでくれたよッ!」
「この度のことッ、菊乃の為に御尽力いただき心より御礼申し上げますッ!」
「いいよぉッ。私も念願叶って娘ができて、毎日賑やかで楽しいしッ!あでもねぇッ、もう『菊乃を嫁にくれ』って言われちゃってッ!困っちゃってんだよねぇッ!」
「なんとッ!何処の不埒者でありますかッッ!?」
「鯉登くんだよッ!!」
その名を聞き届けた瞬間、鶴見の表情は感情が読めないほどに硬くなった。まるで、時が止まったかのように身じろぎ一つせず。
「どうするぅッ?一応キミの意見も聞いておこうかなッ!」
鶴見は、そのまま暫しの沈黙を保っていた。双方、視線を逸らすこと無く、互いの胸の内を探るかのように交わされ──やがて、
「──彼は優秀な軍人ですッ!実直で器量もあるッ。菊乃のことを幸せにできる男だッ。私が保証しますッ!」
「はッはッ!そーかねッ!なら安心だッ!最も、菊乃にはまだ承諾を貰っていないらしいけどねッ。もう少し先の話になりそうだよッ!」
それを聞いて、ふっと漏れるような笑みをこぼした鶴見は、緩慢な動きで身を屈め、足元に置いていた鞄を手に取った。
「思えばそんな歳か……子の成長とは早いものですッ!」
「花嫁姿見たいだろうッ?写真送るから、向こうに着いたら住所知らせたまえよッ!」
鶴見は、黙ってコクリと一つ頷いた。やがて有坂から目を逸らし、遠く洋館の並ぶ街並みへと向き直る。
「……あの子には悪いことをしました……代わりを求めてしまった」
その声は波音に紛れた。
それから、ぼそりと呟いた鶴見の姿を静かに見ていた有坂が、
「菊乃が言っていたよッ。『私にはお父さんが三人いる』とねッ!」
その言葉に目を瞠る。鶴見が振り返り見れば、有坂は満面の笑みを浮かべていた。
「達者でな鶴見くんッ!どうせまた途方もない事を企んでいるのだろうッ!?協力できることがあればいつでも連絡寄越したまえッッ!!」
「はッ!閣下もどうかお元気でッ!!……菊乃のこと、よろしくお願いいたしますッ!!」
朝靄にけぶる景色の中、鶴見の視線は静かに、しかし確かな決意を秘めて、マストにはためく星条旗をまっすぐ見据えていた。
↓読了しましたのポチッあとがき
ここまでご覧いただきありがとうございました。あとがきまで開いてくださり感謝でございます。
気づけば、原作ネタバレどころかいじくりまくってしまって、数々の齟齬もありご不快だったかもしれませんが……全体を通して楽しんでいただけていましたら幸いです。設定の甘さにも目を瞑っていただけますでしょうか何卒よろしくお願いいたします……っ。
クセ強な鯉登くん、勿論面白可愛くて好きなのですが、私は格好良い彼を見たい願望のほうが強いので、物語的にも凛々しい軍人やってる姿を多く描いてしまった気がします。が、もっと「きぇっ」って鳴かせた方がよかった?と反省しています。
アニメはこれから最終章を迎えますし、まだまだ楽しませてくれそうですね。
もし、ご感想お聞かせくださる方いらっしゃればぜひ……!ダメ出しはメンタル豆腐に効くので優しめにお願いいたします……↓
こちらからお気軽にメッセージください。泣いて喜びます。
ハチ
アディショナルあとがき
完結記念企画をはじめたので、よかったら覗いてみてください。
主に物語の裏話を語る場にしようと思っています。
Mainページからご入場いただけます。
気づけば、原作ネタバレどころかいじくりまくってしまって、数々の齟齬もありご不快だったかもしれませんが……全体を通して楽しんでいただけていましたら幸いです。設定の甘さにも目を瞑っていただけますでしょうか何卒よろしくお願いいたします……っ。
クセ強な鯉登くん、勿論面白可愛くて好きなのですが、私は格好良い彼を見たい願望のほうが強いので、物語的にも凛々しい軍人やってる姿を多く描いてしまった気がします。が、もっと「きぇっ」って鳴かせた方がよかった?と反省しています。
アニメはこれから最終章を迎えますし、まだまだ楽しませてくれそうですね。
もし、ご感想お聞かせくださる方いらっしゃればぜひ……!ダメ出しはメンタル豆腐に効くので優しめにお願いいたします……↓
こちらからお気軽にメッセージください。泣いて喜びます。
ハチ
アディショナルあとがき
完結記念企画をはじめたので、よかったら覗いてみてください。
主に物語の裏話を語る場にしようと思っています。
Mainページからご入場いただけます。
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