嘘つきな恋を、もう少し

 もうすぐ帰りのホームルームが終わるな……。

 夕陽の差す保健室の椅子に腰掛けながら、ぽけ〜っと、窓から野球部やサッカー部や陸上部が走っているのを眺める。

 スマホの画面で今の時間を確認した、まさにその時だった。

 胸が、締め付けられるように苦しい。
 それもいつもより。何倍も。
 これは……やばいやつだ。

 額に嫌な汗をかきながら、私は左胸をおさえて、その場にうずくまる。

 保健室の先生は、今しがた、職員室に出払っている。

 スマホで、助けを呼ぶ?

 私──このまま、死ぬのかな……。

 そんなの。そんなの。
 いやだ、イヤだ。嫌だ。

 鮮烈に頭に浮かんだのは、橋坂くんの顔。

 ──「──空」

 私を呼ぶ、あの優しい声。

 私まだ、大切なこと、橋坂くんに伝えてない。

 このまま終わってしまうだなんて、絶対に嫌だ!

 お願いします、もう少しだけ、延びてください。

 ──私の寿命!

 私は真っ直ぐ前を向いて走り出した。
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