星探し
翌週篭手切はいつも通りれっすんにやって来た。
しかしその姿はいつもよりどこか覇気がないようにも思える。
何にしても上の空だし、ダンス中に転ぶし、動線は間違えて衝突するし……と言う感じで、とにかく様子がおかしかった。
篭手切がそんな様子だから、クワたちも心配して、
「今日は疲れてるんじゃないかな」
と言いすぐに解散になってしまった。
「ちゃんと休んでね」
「また来週ね」
「私たちも練習しておきますからね」
クワたちに優しい言葉をかけられて、篭手切は「すみません……」と項垂れている。
そんな様子を見ていると、「なにかあったのだろうか」と思うのは自然だろう。
だから何か悩んでいることがあるのなら力になってあげたいと思ったのだ。
「なんかあったか?」
篭手切を見送るために歩きながらそう問う。
「言いたくなかったら言わなくてもいいけどさ。なんか俺にできることがあったら言ってくれ」
そう言葉をかけるも、篭手切は俯いたまま、「……ありがとうございます」と呟くだけだった。
随分と気落ちしているようだ。
これはひとますそっとしておいたほうがいいかもしれないと思い「またな。ゆっくりしろよ」と声をかけてそのまま送り出してしまった。
この時、もっときっと何か声をかけていればよかったのだ。
引き留めていればよかった。もっと一緒にいたいと言えばよかった。
それで、聞けばよかったのだ。
……マツと何かあったのかって。
……その次の週から、篭手切はれっすんに現れなくなった。
一週間、二週間、一ヶ月……どれだけ時が過ぎても、篭手切はもうやってこない。
最初は篭手切がいなくても俺たちだけでれっすんをしていたが、もう二ヶ月目にさしかかろうとするとそんなことを続ける空気ではなくなってしまった。
言ってしまえば俺たちは篭手切のためにここでれっすんをしていたわけで、その張本人がいなければもうやる必要もないのだ。
「篭手切、どうかしたのかな」
「休みの日が変わってしまったのかもしれませんね」
「うん。……そうだと、いいけど」
そんな話をしながらも、俺たちは常に一つの最悪な可能性について考えていた。
……俺たちは刀剣男士だ。政府顕現であっても、本分は戦うこと。どこかに襲撃があったとか、そういう話は聞いていないが……もしかしたら、そういうこともありえない話ではないたろう。
出陣をして、そのまま、という可能性だって無い話ではない。
だが誰もそんなことを口にしはしない。そうかもしれないという気持ちが強まっても、口に出すことは決してなかった。
「これからどうしよっか」
「篭手切がいないのに続けるのもね……」
「……豊前、どうしたい?」
クワに話を振られ、俺は困り果ててしまった。
もしかしたら来週篭手切がここにやってくるかもしれない。だが連絡手段がない以上それを聞くすべがないのだ。
もし俺たちがここでもう集まることをやめてしまって、いつか篭手切がひょっこりやってきたら可哀想だ。
……だけど、そんなことが起こる確証もない。そんな低い可能性のためにこいつらを毎週呼ぶのも、悪い気がしてしまう。
しばらく考えたあと、「ま、仕方ねぇか」とできるだけ明るく声を出す。
「また篭手切と会えたらお前たちのこと呼ぶよ。わざわざ休みに集まるのも大変だろ?」
サミとクモはどこか不満そうな顔をしていたが、この時間がもはや意味のあるもので無くなっていたのは彼らが一番わかっているのだろう。
「……わかりました」
彼らはそう素直に頷いてくれた。
そのまま二振りとは別れて、クワと揃って寮の方へ向かう。
歩きながら、しばらく続いた無言を破ったのはクワの方だった。
「……何かあったのかな」
「……さあな。……まあ、何があってもおかしくないだろ」
こんな時代なんだから、そうは言ってみる。だけど俺の中には、どこか胸の奥につっかえているものがあった。
『……篭手切のこと、頼んだよ』
あの時だった一度だけ話したマツが言っていた言葉。あれはどういうことだったのだろう。
今となれば、知ることもできない。
「マツと……何かあったのか?」
「……ちょっと何かありそうな二振りだったしねえ……」
クワは、それだけを呟いた。
俺は何も返せなかった。
結局篭手切にこの胸の奥の気持ちを伝えることはできなかった。
こんなことになるのなら、クワの言う通りもっと早くしていればよかったのだ。
……今となっては、もう全てが遅すぎた。
しかしその姿はいつもよりどこか覇気がないようにも思える。
何にしても上の空だし、ダンス中に転ぶし、動線は間違えて衝突するし……と言う感じで、とにかく様子がおかしかった。
篭手切がそんな様子だから、クワたちも心配して、
「今日は疲れてるんじゃないかな」
と言いすぐに解散になってしまった。
「ちゃんと休んでね」
「また来週ね」
「私たちも練習しておきますからね」
クワたちに優しい言葉をかけられて、篭手切は「すみません……」と項垂れている。
そんな様子を見ていると、「なにかあったのだろうか」と思うのは自然だろう。
だから何か悩んでいることがあるのなら力になってあげたいと思ったのだ。
「なんかあったか?」
篭手切を見送るために歩きながらそう問う。
「言いたくなかったら言わなくてもいいけどさ。なんか俺にできることがあったら言ってくれ」
そう言葉をかけるも、篭手切は俯いたまま、「……ありがとうございます」と呟くだけだった。
随分と気落ちしているようだ。
これはひとますそっとしておいたほうがいいかもしれないと思い「またな。ゆっくりしろよ」と声をかけてそのまま送り出してしまった。
この時、もっときっと何か声をかけていればよかったのだ。
引き留めていればよかった。もっと一緒にいたいと言えばよかった。
それで、聞けばよかったのだ。
……マツと何かあったのかって。
……その次の週から、篭手切はれっすんに現れなくなった。
一週間、二週間、一ヶ月……どれだけ時が過ぎても、篭手切はもうやってこない。
最初は篭手切がいなくても俺たちだけでれっすんをしていたが、もう二ヶ月目にさしかかろうとするとそんなことを続ける空気ではなくなってしまった。
言ってしまえば俺たちは篭手切のためにここでれっすんをしていたわけで、その張本人がいなければもうやる必要もないのだ。
「篭手切、どうかしたのかな」
「休みの日が変わってしまったのかもしれませんね」
「うん。……そうだと、いいけど」
そんな話をしながらも、俺たちは常に一つの最悪な可能性について考えていた。
……俺たちは刀剣男士だ。政府顕現であっても、本分は戦うこと。どこかに襲撃があったとか、そういう話は聞いていないが……もしかしたら、そういうこともありえない話ではないたろう。
出陣をして、そのまま、という可能性だって無い話ではない。
だが誰もそんなことを口にしはしない。そうかもしれないという気持ちが強まっても、口に出すことは決してなかった。
「これからどうしよっか」
「篭手切がいないのに続けるのもね……」
「……豊前、どうしたい?」
クワに話を振られ、俺は困り果ててしまった。
もしかしたら来週篭手切がここにやってくるかもしれない。だが連絡手段がない以上それを聞くすべがないのだ。
もし俺たちがここでもう集まることをやめてしまって、いつか篭手切がひょっこりやってきたら可哀想だ。
……だけど、そんなことが起こる確証もない。そんな低い可能性のためにこいつらを毎週呼ぶのも、悪い気がしてしまう。
しばらく考えたあと、「ま、仕方ねぇか」とできるだけ明るく声を出す。
「また篭手切と会えたらお前たちのこと呼ぶよ。わざわざ休みに集まるのも大変だろ?」
サミとクモはどこか不満そうな顔をしていたが、この時間がもはや意味のあるもので無くなっていたのは彼らが一番わかっているのだろう。
「……わかりました」
彼らはそう素直に頷いてくれた。
そのまま二振りとは別れて、クワと揃って寮の方へ向かう。
歩きながら、しばらく続いた無言を破ったのはクワの方だった。
「……何かあったのかな」
「……さあな。……まあ、何があってもおかしくないだろ」
こんな時代なんだから、そうは言ってみる。だけど俺の中には、どこか胸の奥につっかえているものがあった。
『……篭手切のこと、頼んだよ』
あの時だった一度だけ話したマツが言っていた言葉。あれはどういうことだったのだろう。
今となれば、知ることもできない。
「マツと……何かあったのか?」
「……ちょっと何かありそうな二振りだったしねえ……」
クワは、それだけを呟いた。
俺は何も返せなかった。
結局篭手切にこの胸の奥の気持ちを伝えることはできなかった。
こんなことになるのなら、クワの言う通りもっと早くしていればよかったのだ。
……今となっては、もう全てが遅すぎた。