管理番号参壱七番山姥切長義の追憶 弍
何となく書類仕事に身が入らない。何をしようにも彼女のことがチラついて仕方がないのだ。
あの山姥切国広たちの話をずっと考えている。ここから出ることができれば、彼女にとっては幸せだと俺は思っていた。こんなところに閉じ込められて、苦しんで死んでいく。それが彼女の本意であるわけがない。だが望むところに彼女を連れていくことができないのならば、彼女にとっての幸せはどこにあるのだろう。
もしかしたら、ここでこのまま死んでいく方が彼女にとっては幸福なのだろうか。そう考えるときもある。だが俺に彼女の幸せなんてわかるはずがない。こんなことをしているのも、俺の身勝手にすぎない。俺はここから彼女を解放してあげたい。ただそれだけなのだ。
「よう坊主。今日も精が出るな!」
「うわっ!」
突然耳元で囁かれ、思わず飛び上がった。手に持っていたボールペンを咄嗟に後ろに向けると、「おい、僕だ。僕は不審者じゃないぞ」とたいそう上機嫌に笑っている一文字則宗の顔が視界に映った。
「……驚かせるのはやめてくれ」
そう溜め息を吐いて手を下げる。彼は勝手に俺が作業をしている机に肘をつく。それからこちらを見上げるように少し屈んだ。
「何か楽しいことでも考えているのか?」
「は?」
「うははは! 冗談だ! まるでこの世の終わりのような顔をしているな」
彼はそう大笑いしながら俺の背中を叩いてくる。機械がずれるだろう。やめてほしい。
「お前さんが考えていることはだいたいわかるぞ。だが考えすぎもよくないぞ。答えはどれだけ時間があっても出ないからな」
彼はニヤニヤと笑いながらそう俺に言った。口で息を吸って、ゆっくり吐き出す。
「……何の話をしている」
冷静を努めて口にする。嫌な汗が背中を伝っていた。
なんなんだ、この刀は。何もかもを知っているかのような物言いをして、底が見えない。彼は昔からそうだった。突然俺に絡んできて、何だかよくわからないようなことを言って去っていく。慣れたものではあった、はずなのだが。
「それは自分で考えろ! 若者は悩むものだからな」
そう彼は再度背中を思いきり叩いてくる。そんな強い力で叩かれたら背中に刺さっている管が抜けるだろう。やめてくれ。
「そんなに嫌がることもないだろう。全く……若者はもっと可愛げを持つもんだ」
「そんなに若者ではない」
「ええい、屁理屈を言うな」
「何の用だ」
その手を払い除けながらそう彼のことを睨みつける。何の用もなしに邪魔……話に来ただけなのかもしれないが。
「実験を見学したくなってな」
「たまに見に来ているんだろう。いつも通り勝手にすればいいじゃないか」
「つれないことを言うんじゃない。今日僕はガヤを入れに行くって朝から決めているんだ」
なぜわざわざそれを俺に言いに来たんだ。彼が何がしたいのか全く理解できない。
「用は何か、と聞かれればお前さんの冷やかしとしか言いようがないな」
彼はそう言うと、俺の肩を叩いてから部屋を去っていってしまった。……嵐のようなやつだな。
俺は呆れたように息を吐くと、ゆっくりと立ち上がった。今日も、実験の時間がやってくる。
あの山姥切国広たちの話をずっと考えている。ここから出ることができれば、彼女にとっては幸せだと俺は思っていた。こんなところに閉じ込められて、苦しんで死んでいく。それが彼女の本意であるわけがない。だが望むところに彼女を連れていくことができないのならば、彼女にとっての幸せはどこにあるのだろう。
もしかしたら、ここでこのまま死んでいく方が彼女にとっては幸福なのだろうか。そう考えるときもある。だが俺に彼女の幸せなんてわかるはずがない。こんなことをしているのも、俺の身勝手にすぎない。俺はここから彼女を解放してあげたい。ただそれだけなのだ。
「よう坊主。今日も精が出るな!」
「うわっ!」
突然耳元で囁かれ、思わず飛び上がった。手に持っていたボールペンを咄嗟に後ろに向けると、「おい、僕だ。僕は不審者じゃないぞ」とたいそう上機嫌に笑っている一文字則宗の顔が視界に映った。
「……驚かせるのはやめてくれ」
そう溜め息を吐いて手を下げる。彼は勝手に俺が作業をしている机に肘をつく。それからこちらを見上げるように少し屈んだ。
「何か楽しいことでも考えているのか?」
「は?」
「うははは! 冗談だ! まるでこの世の終わりのような顔をしているな」
彼はそう大笑いしながら俺の背中を叩いてくる。機械がずれるだろう。やめてほしい。
「お前さんが考えていることはだいたいわかるぞ。だが考えすぎもよくないぞ。答えはどれだけ時間があっても出ないからな」
彼はニヤニヤと笑いながらそう俺に言った。口で息を吸って、ゆっくり吐き出す。
「……何の話をしている」
冷静を努めて口にする。嫌な汗が背中を伝っていた。
なんなんだ、この刀は。何もかもを知っているかのような物言いをして、底が見えない。彼は昔からそうだった。突然俺に絡んできて、何だかよくわからないようなことを言って去っていく。慣れたものではあった、はずなのだが。
「それは自分で考えろ! 若者は悩むものだからな」
そう彼は再度背中を思いきり叩いてくる。そんな強い力で叩かれたら背中に刺さっている管が抜けるだろう。やめてくれ。
「そんなに嫌がることもないだろう。全く……若者はもっと可愛げを持つもんだ」
「そんなに若者ではない」
「ええい、屁理屈を言うな」
「何の用だ」
その手を払い除けながらそう彼のことを睨みつける。何の用もなしに邪魔……話に来ただけなのかもしれないが。
「実験を見学したくなってな」
「たまに見に来ているんだろう。いつも通り勝手にすればいいじゃないか」
「つれないことを言うんじゃない。今日僕はガヤを入れに行くって朝から決めているんだ」
なぜわざわざそれを俺に言いに来たんだ。彼が何がしたいのか全く理解できない。
「用は何か、と聞かれればお前さんの冷やかしとしか言いようがないな」
彼はそう言うと、俺の肩を叩いてから部屋を去っていってしまった。……嵐のようなやつだな。
俺は呆れたように息を吐くと、ゆっくりと立ち上がった。今日も、実験の時間がやってくる。