管理番号参壱七番山姥切長義の追憶 弍
職員証を翳して鍵を開く。日が経つごとに彼女と会うことが恐ろしくなっているような気がした。弱っていく彼女に何もしてやれることができないことが、恐ろしかった。
「気分はどうかな」
中に入って、ベッドの側に近寄る。彼女は布団を深く被って丸く蹲っていた。
「食事を持ってきたよ。あと本を、俺の私物の図鑑だけど……眺めるだけでも気晴らしになるんじゃないかな」
細かい文字を読むのが辛いのならば、写真とか絵ならいいのではと適当なものを持ってきてはみたが、不要だっただろうか。言葉をしばらくかけてみるが、彼女は返事をしない。寝ているのだろうかとも思うが、寝息が聞こえてくるわけでもない。
「……食事を取らないか。少しだけでもいいから」
そうもう一度声をかけて、布団の上に手を伸ばした時だった。
「いらない」
か細い返事が返ってくる。彼女は布団から顔を出すと、こちらをゆっくりと見上げた。
「食べないと元気が出ないよ」
「……気分が悪いの」
「少しでいい、一口で構わないから」
彼女に頼み込むように言う。彼女は返事をせず蒼白な顔のまま暗い瞳をこちらに向けていた。しばらくの沈黙の後、彼女が「少しだけなら」と囁くように口にする。それに少し安堵しながら、俺は彼女の頭を撫でた。
「起き上がれるかな」
その背中に手を添えて問いかけると、彼女はこくりと頷いてゆっくりと体を起こした。
彼女はいつも寝ているとは言っているが、その目の下には濃いくまが這っている。おそらく俺の気のせいではなく、それは日々濃くなっているように思える。
匙に薄い粥を掬うと、彼女はそれを口の中に流し込む。その様子はひどく痛々しい。
「図鑑……ありがとう」
彼女はちまちま粥を食べながらそう口にする。
「構わないよ。暇を潰すものはあった方がいいだろう」
彼女は軽く頷くと、食事を続ける。
お椀に半分ほどの量を食べた後、彼女は俺に「もういらない」と申し訳なさそうに告げてスプーンを盆を置いた。これでもここ数日にしては、食べた方のような気がするため、もう無理に促すようなこともしない。
「……今日は、何があるの」
彼女は再びベッドに身を預けると、そう暗い声を出した。
「……ああ、まあね」
そう告げるのが心苦しくて仕方がない。彼女は俺から目を逸らすと、「そっか」と静かに呟いた。その呟きはもう全てを諦めているかのように思われて、どうにも居た堪れない気持ちになるしか無かった。
彼女はそれ以上何も言わない。図鑑は、机の上に静かに横たわったままだった。
「気分はどうかな」
中に入って、ベッドの側に近寄る。彼女は布団を深く被って丸く蹲っていた。
「食事を持ってきたよ。あと本を、俺の私物の図鑑だけど……眺めるだけでも気晴らしになるんじゃないかな」
細かい文字を読むのが辛いのならば、写真とか絵ならいいのではと適当なものを持ってきてはみたが、不要だっただろうか。言葉をしばらくかけてみるが、彼女は返事をしない。寝ているのだろうかとも思うが、寝息が聞こえてくるわけでもない。
「……食事を取らないか。少しだけでもいいから」
そうもう一度声をかけて、布団の上に手を伸ばした時だった。
「いらない」
か細い返事が返ってくる。彼女は布団から顔を出すと、こちらをゆっくりと見上げた。
「食べないと元気が出ないよ」
「……気分が悪いの」
「少しでいい、一口で構わないから」
彼女に頼み込むように言う。彼女は返事をせず蒼白な顔のまま暗い瞳をこちらに向けていた。しばらくの沈黙の後、彼女が「少しだけなら」と囁くように口にする。それに少し安堵しながら、俺は彼女の頭を撫でた。
「起き上がれるかな」
その背中に手を添えて問いかけると、彼女はこくりと頷いてゆっくりと体を起こした。
彼女はいつも寝ているとは言っているが、その目の下には濃いくまが這っている。おそらく俺の気のせいではなく、それは日々濃くなっているように思える。
匙に薄い粥を掬うと、彼女はそれを口の中に流し込む。その様子はひどく痛々しい。
「図鑑……ありがとう」
彼女はちまちま粥を食べながらそう口にする。
「構わないよ。暇を潰すものはあった方がいいだろう」
彼女は軽く頷くと、食事を続ける。
お椀に半分ほどの量を食べた後、彼女は俺に「もういらない」と申し訳なさそうに告げてスプーンを盆を置いた。これでもここ数日にしては、食べた方のような気がするため、もう無理に促すようなこともしない。
「……今日は、何があるの」
彼女は再びベッドに身を預けると、そう暗い声を出した。
「……ああ、まあね」
そう告げるのが心苦しくて仕方がない。彼女は俺から目を逸らすと、「そっか」と静かに呟いた。その呟きはもう全てを諦めているかのように思われて、どうにも居た堪れない気持ちになるしか無かった。
彼女はそれ以上何も言わない。図鑑は、机の上に静かに横たわったままだった。