管理番号参壱七番山姥切長義の追憶 弍

 鍵を開けて中に入る。彼女は枕に顔を預けて横になっていた。

「食事を持ってきたよ」

 そう声をかけると、彼女はしばらくした後ゆっくり体を起こした。あれほど綺麗だった髪が少し傷み始めているのを見て少し胸が痛くなる。

「……ありがとう」

 そう小さな声で呟くと、彼女は匙を手に取って少しずつ食事を始めた。

「美味しいか」
「……さあ、どうだろう」

 そうぼんやり口にして、彼女は食事を続ける。

「また少し痩せたんじゃないか」

 彼女は俺の言葉には応えず、薄く笑った。その様子が見ていられなくて、すまないとすぐに口にする。……俺は何を言っているんだ。

「長義のそれ、重たそうだよね」

 彼女はゆっくりと食事を続けながらそう言った。視線は俺の胸部に取り付けられている機械に向けられている。

「気にしたことも無かった。重いのかもしれないが……もう慣れてしまったよ」

 そう答えると、「そっか」と彼女はなんでもないことのように返してくる。
 何事にももう慣れてしまった。得体の知れない力が無理やりこの身に流れ込んでいることにも、それで俺が生かされていることにも。

「これがなければ俺は生きていけないんだ。だから、もう慣れてしまった」
「そう、なんだ」

 彼女が表情を落とす。違う、俺はそんな顔をさせたかったわけではないんだ。

「長義も痛い思いをしてるのね」

 それだけ呟くと、彼女は俺から視線を逸らした。

「そんなことない」

 反射的に口をついていた。痛い思い、そんなものしているわけがない。君に比べたら、俺の受けてきたことなんてほんの些細なことに過ぎないというのに。

「……君は少し優しすぎるよ」

 そう言いながら彼女の髪に少し触れた。本当はもっと繊細で柔らかい髪をしていたのだろう。綺麗に手入れをされていた、素敵な髪だったはずなのに。

「優しくなんかないよ」

 眉を下げて彼女はそう笑った。そうだったらよかった。そうだった方が、幸せだったはずなのに。俺も、この子も。
 しばらくして、食事を終えた彼女は手を合わせると匙を置いた。

「お待たせ。……ご馳走様でした」
「お粗末さま。それじゃあ、また。ゆっくりおやすみ」

 軽くその頭を撫でてからお盆を回収する。
 またね、そう後ろからかけられる声を聞きながら俺は部屋を後にした。
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