炎の中に想いを託して
それからしばらくすると、大阪城に出陣していたものたちが帰城してきた。
大量の小判箱を抱えて、「下がれそうなとこまで下がってきました」と鯰尾は笑う。
「おかえり。怪我はない?」
「ああ。まだ資材が十分にあるわけじゃない。手入れが必要になるようなところまでは行かないようにしていたよ」
審神者の問いに歌仙がそう返す。なら良かった、と彼女は頷く。
この本丸には資材がまだ十分にあるわけではない。手入れをするのにも資材を必要とする。今は確実に無傷で帰って来れるところまでしか行かない方がいい。それは最初から話し合っていたことだ。
「それより! 主! ほらこれ見てください!」
突然二人の間に割り込んできた鯰尾は、腕に大量の刀を抱えていた。大坂城から持ち帰ってきたのだろう。
「うわ……すごいね……」
「あるじさーんっ、顕現してもいいよね?」
彼らと共に出陣していた乱藤四郎が鯰尾の後ろから顔を出してそう審神者に笑いかける。彼女は微笑んだまま「うん、もちろん」と口にした。内心これ全部か、とは思っているのだが。
「ここでライフハックですが」
「うわびっくりした」
その時、鯰尾の抱えている刀の上にちょこんとこんのすけが突如として現れた。
「同じ刀は習合や連結と言う形で強化に使うことができます。例えばこれ、鯰尾藤四郎ですね。こういうすでに顕現している刀はそのような使い方をされるのがよろしいかと」
ライフハックではなくただのシステムの説明ではないか。彼女はぼんやりそう思うが何も言わなかった。
「じゃあ……まだ顕現してないのだけ顕現すればいいってこと?」
「そう言うことです」
「わかった。じゃあそうしよう」
彼女はそういうと鯰尾に手を差し出す。そして彼の抱えていた刀をそのまま受け取った。重い。鯰尾が軽々と持っているからそんなに重いものだとは思っておらず、審神者は一瞬よろめきそうになった。
「もう一回行って来ていいですか?」
鯰尾の後ろから堀川の声が聞こえた。
「えーまた潜るのか? あそこ同じ景色ばっかで飽きるんだよなー」
同じく彼らと共に出陣していた愛染国俊が不服そうな声で堀川に言っている。
「僕は兼さんを見つけなければいけないので……」
「俺たちが弟たちばっか拾って来ちゃってごめんなさいって」
「いえ、兼さんが見つかるまで回り続ければいいんです」
堀川はニコニコしながらそう言った。「そうですよ。頑張ってぐるぐるしましょう」と鯰尾が堀川の肩を叩きながら口にする。
「その前に昼食を食べるよ。その後にこの刀たちを顕現して、そしたらまた出陣しよう。それでいいね?」
ぱんとひとつ手を打って、歌仙が彼らに言った。話を振られた審神者は「うん。それでいいよ」とこくりと頷く。
「腹減ったなー」
「お昼はなんだろうね?」
皆いろんなことを口々に言いながら広間へ向かっていく。出陣していなかった者たちがお昼の準備をしているはずだ。
「絶対今日中に兼さんを主さんに紹介しますからね!」
「今日中は……うん、まあ善処しようね」
堀川と歌仙も彼らの後に続く。残された審神者の方を見て、鯰尾は「ほら、主も行きましょうよ」と声をかける。彼女は首肯すると、ずっと抱えたままだった刀をそっと床に置くと部屋を出るべく歩き出した。
「骨喰? どうしたの?」
鯰尾がふと口をひらく。骨喰藤四郎、彼も鯰尾たちと共に出陣していた。これまで一言も話さずに彼らの話を聞いていた骨喰は何やらぼんやりとした様子で入り口付近に立っていた。
「……兄弟がいつまでも来ないから待っていただけだ。行こう」
「……うん。あーお腹減ったなあ。まだ食べたことがないものだといいなー」
並んで歩き出す鯰尾と骨喰を見つめから、一歩遅れて審神者も歩き出した。
大量の小判箱を抱えて、「下がれそうなとこまで下がってきました」と鯰尾は笑う。
「おかえり。怪我はない?」
「ああ。まだ資材が十分にあるわけじゃない。手入れが必要になるようなところまでは行かないようにしていたよ」
審神者の問いに歌仙がそう返す。なら良かった、と彼女は頷く。
この本丸には資材がまだ十分にあるわけではない。手入れをするのにも資材を必要とする。今は確実に無傷で帰って来れるところまでしか行かない方がいい。それは最初から話し合っていたことだ。
「それより! 主! ほらこれ見てください!」
突然二人の間に割り込んできた鯰尾は、腕に大量の刀を抱えていた。大坂城から持ち帰ってきたのだろう。
「うわ……すごいね……」
「あるじさーんっ、顕現してもいいよね?」
彼らと共に出陣していた乱藤四郎が鯰尾の後ろから顔を出してそう審神者に笑いかける。彼女は微笑んだまま「うん、もちろん」と口にした。内心これ全部か、とは思っているのだが。
「ここでライフハックですが」
「うわびっくりした」
その時、鯰尾の抱えている刀の上にちょこんとこんのすけが突如として現れた。
「同じ刀は習合や連結と言う形で強化に使うことができます。例えばこれ、鯰尾藤四郎ですね。こういうすでに顕現している刀はそのような使い方をされるのがよろしいかと」
ライフハックではなくただのシステムの説明ではないか。彼女はぼんやりそう思うが何も言わなかった。
「じゃあ……まだ顕現してないのだけ顕現すればいいってこと?」
「そう言うことです」
「わかった。じゃあそうしよう」
彼女はそういうと鯰尾に手を差し出す。そして彼の抱えていた刀をそのまま受け取った。重い。鯰尾が軽々と持っているからそんなに重いものだとは思っておらず、審神者は一瞬よろめきそうになった。
「もう一回行って来ていいですか?」
鯰尾の後ろから堀川の声が聞こえた。
「えーまた潜るのか? あそこ同じ景色ばっかで飽きるんだよなー」
同じく彼らと共に出陣していた愛染国俊が不服そうな声で堀川に言っている。
「僕は兼さんを見つけなければいけないので……」
「俺たちが弟たちばっか拾って来ちゃってごめんなさいって」
「いえ、兼さんが見つかるまで回り続ければいいんです」
堀川はニコニコしながらそう言った。「そうですよ。頑張ってぐるぐるしましょう」と鯰尾が堀川の肩を叩きながら口にする。
「その前に昼食を食べるよ。その後にこの刀たちを顕現して、そしたらまた出陣しよう。それでいいね?」
ぱんとひとつ手を打って、歌仙が彼らに言った。話を振られた審神者は「うん。それでいいよ」とこくりと頷く。
「腹減ったなー」
「お昼はなんだろうね?」
皆いろんなことを口々に言いながら広間へ向かっていく。出陣していなかった者たちがお昼の準備をしているはずだ。
「絶対今日中に兼さんを主さんに紹介しますからね!」
「今日中は……うん、まあ善処しようね」
堀川と歌仙も彼らの後に続く。残された審神者の方を見て、鯰尾は「ほら、主も行きましょうよ」と声をかける。彼女は首肯すると、ずっと抱えたままだった刀をそっと床に置くと部屋を出るべく歩き出した。
「骨喰? どうしたの?」
鯰尾がふと口をひらく。骨喰藤四郎、彼も鯰尾たちと共に出陣していた。これまで一言も話さずに彼らの話を聞いていた骨喰は何やらぼんやりとした様子で入り口付近に立っていた。
「……兄弟がいつまでも来ないから待っていただけだ。行こう」
「……うん。あーお腹減ったなあ。まだ食べたことがないものだといいなー」
並んで歩き出す鯰尾と骨喰を見つめから、一歩遅れて審神者も歩き出した。