第2章 2013.10.04~信頼~
そうして、8時27分。ほとんどの住民の避難が終了した。
落ちてくる彗星を見て、勅使河原は心の中で笑いまくっている。まさか、こんな奇跡が本当にあるとは。今までにない畏怖の念を抱く。
三葉の一言がなければ、俺は二十分後には神社の祭りに参加し、あの鉄塊に巻き込まれ死んでいるだろう。そう、偶然が重なり呼んだ奇跡だ。これを伝えてくれた三葉には、今はもう感謝しかない。
「でも……何でわかったんよ……彗星が割れるって……誰かが予測しとったん?」
「んーむ、もしかしたら、宮水神社の系統に予言能力でもあったんやないか?」
今にして思えば、あれは予知夢かなにかだったんかね?
「こんなときまでオカルトにしんといて!!」
こんな性分だから、どうしてもオカルトじみた方に考えが至ってしまう。早耶香には今回も否定されたが、別にオカルトなんて楽しい想像なんだし良いじゃないかと思う次第。
「いや……案外……そうなのかも……。」
「「え……?」」
「オカルトも、たまには信じてみるもんやよ……。」
耳を疑った。彗星による空震で聞き違えたか。
一瞬、こいつは「狐憑き」の三葉か?と思いそうになったが、さっきのことを思いだしすぐになかったことにする。あんなこと言ってたしな。
『お願い……今までの私を覚えてて……ここ一ヶ月の……「狐憑き」の私を……。』
でも、本物の三葉だというそんなことも、もうどうでも良かった。
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なぜ昼間、父親である俺に会いに来たのは「三葉ではない何か」だと思ったのか。もしかすると、この疑問の答えはないのかもしれない。
でも、親友の言っていることは間違ってはいなかった。さっきは拍子抜けしたけど、例え予知夢であったとしても、「狐憑き」の三葉と「本当の」三葉、どっちも「三葉」なんだ。
一日中、身体がボロボロになるまで奔走し、犯罪紛いのことまでしたが、町を救おうと駆け回り、誰よりも必死になっていた。そんな心優しい女だ。
星が落ちてくる。皮肉なことに、怖くなるほど、綺麗な光景だった。
そんなことを思う勅使河原克彦、名取早耶香、宮水俊樹の意識の中を、隕石が町に落ちるその瞬間、一筋の閃光が走り抜けていった。
そして……
2013年10月4日、午後8時42分。
1つの大きな爆弾が、
1つの町を、消し去る。
to be continued...