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第2章 2013.10.04~信頼~




 早耶香は2年1組の自分の椅子に座った。あの後、ユキちゃん先生だけは本気で信じてくれたが、他の先生たちは耳を傾けてはくれたものの、完全に信用させるには至らなかった。やがて役場の人たちと駐在の人がやってきて、早耶香を聴取する準備を始めていた。

 「ねぇ、名取さん?」

 付き添ってくれていたユキちゃん先生が口を開く。

 「はい。」

 「宮水さんたち、今どこにいるかわからない?」

 「……わからないです……」

 「そう……。」

 さっきも三葉に電話をかけてみた。だけど、停電のせいなのか、全然繋がらなくなってしまったのだ。不安が募る。

 「私ね……」

 「?」

 「こんな歌を聞いたことがあるんだ。和歌なんだけどね。」


 ―天つ河 咲きて流るる 箒星 遠き人見し 共にあらばや


 「どこかでこれを聞いたことがあるの。『夜空の天の川に輝く箒星を見上げて思うのです。この彗星を、遠いところにいるあなたと一緒に見ていたいのに』っていうような意味でね。でも、もしかしたらこれは、夜空を『裂きて流るる』、あのティアマト彗星じゃないのかなって思って。宮水さんの予言は信じ難いけど……。」

 「裂きて、流るる……。」


 テッシーが言ってた。糸守湖は1000年少し前にできた隕石湖だと。ティアマト彗星の周期は1200年。話がより現実味を帯びてくる……。

 「でも、宮水さんは正直な子だし、最近はすごく一生懸命よね。だから名取さん、私たちは、彼女たちを信じて待ちましょう?」

 その一言で、一気に気持ちが落ち着いた。

 「……はい。」

 その時。扉を開けて、先生が焦りを見せて教室に入ってきた。

 「名取!!」



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