第2章 2013.10.04~信頼~
「マ、マジで……割れとる!!!」
父に呼び止められ、諦めかけて空を見上げた勅使河原克彦は目を見張った。三葉の言っていたことは本当だった。いつの間にか、巨大な彗星の側を群れとなって無数の流星が流れていた。
そして、そのなかでもとりわけ大きい赤い輝きが、彗星の軌道から急激に逸れていく。そこから起こるであろう状態は容易に想像できた。
「答えんか!克彦!!」
空を見上げる勅使河原に父が怒鳴り散らす。……こうなったら、誰が相手だろうがもう関係ない。何をしてるかだ?ハハッ、そんなの、いくらでも答えてやるさ。今はそんな場合じゃねぇ!!!
「含水爆薬のことか。ああそうさ!!俺が変電所ぶっ壊した!!」
「何だと……!?このバカが!!お前のやってることがどういうことか……」
「空見てみいやいっ!!!!」
今までにないほど叫んだ。これは緊急事態だ。さっき確認した時計で19:25。あと1時間半もないのだ。
強く言われて渋々空を見た父も目の色を変えた。
「彗星が二つに割れとる!?」
「あれが落ちるんや!この町にな!だからやったんや!」
「!??」
もうやけだ。どうとでもなれ。
「ハハッ……まさか、そんな確証ないやろが!!?」
「三葉が言ってたんや!!『この目で見た』ってなぁ!!!」
父は彗星から目を離さない。畳みかけるように、肩を掴み、勅使河原は叫ぶ。
「説教なら後でいくらでも聞いてやったるでな!とりあえず逃げるんや!親父もみんなに言ってくれ!避難場所は高校や!!タイムリミットは8時42分!!!後一時間しかないんやぞ!!!??」