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第1章 2013.10.04~消滅~







「君の名は。」~Reunion~
《第1章 2013.10.04~消滅~》








 「お父さん!」

 身体中ボロボロになりながら宮水三葉は糸守町役場:町長室に飛び込む。さっきの廊下の時計では、7時40分を過ぎたくらいだったろうか。確か落ちる時間は8時42分。もう時間がない。

 「三葉……お前までまた!」

 そういえば、あの人が言ってたっけ。

 『テッシーとサヤちんが準備してくれてるけど、最後は親父さんを説得する必要がある。だけど、俺じゃダメだった……。三葉、プレッシャーになるかもしれないけど、お前に頼むしかない!』

 うん。必ずやり遂げてみせるよ。絶対に負けない!



 三葉ゆっくりと足を進める。近づくにつれ、父:俊樹の顔が徐々に変わっていく。

 「まさか……本当なのか、昼間のことは!?」

 力を込めて頷いた。

 「うん。外を見たらわかる!落ちるまであと一時間もないんよ!!」

 「…………」

 俊樹は目をそらした。

 お願い、信じて……お父さん……!



 しばらくの沈黙の後、俊樹は口を開いた。

 「わかった、今すぐに避難を開始させる。」

 ……!!

 「高校なら大丈夫なんだなっ?」

 「う、うん!お願い!」

 やった……!





 「三葉」

 「!」

 不意に後ろから声をかけられた。

 「おばあちゃん……?それに四葉も……!」

 「お姉ちゃん、気づいとらんかったん?」

 「う、うん……。でもなんでここに……?」

 今日はお祭りだから、神社の方にいるはずなんじゃ……。

 「おばあちゃんに連れられてここに来て、お父さんに最近のお姉ちゃんの様子伝えとったんやけど……なぁおばあちゃん?」

 「……ん。でも今は本当の三葉やな。」

 ……え?

 「三葉、あんたやなかったろうけど、朝は信じてあげれんですまなかったね。大丈夫やさ、一時間もあれば、なんとかなる。」

 私じゃ……なかった……って、

 「き、気づいてたの?」

 私が入れ替わりをしてたことを……。

 「ああ、わしも、あんたの母さんも経験しとったことや。そのときの夢は、もう忘れてまったけどな。」

 「ちょ、おばあちゃん、どういうことなん?お姉ちゃんがお姉ちゃんやなかったって……」

 四葉は不審げに首をかしげた。対して一葉はにっこりと笑って言った。

 「四葉もいずれわかるでね。三葉、その夢を大切にしないよ。いつか消えてなくなってまうんやから。」

 「……!」

 その言葉が、やけに重々しくのしかかる。

 消える……。

 楽しかった東京での暮らしも、あの人への想いも、あの人の記憶も、全て……。

 そう思った瞬間、三葉は頼むように言っていた。

 「わかってるやさ。だからお願い、覚えてて。私じゃない私を……。」

 「三葉……」

 一葉は驚いているようだった。四葉は相変わらず怪訝そうに私の様子をうかがった。

 少しして、一葉はにっこりと笑ってくれた。

 「うん、わかったでな。」

 そこに、二階の総務課に行っていた俊樹が戻ってきた。

 「お義母さん、私たちも早く逃げましょう!三葉と四葉も、早く!」

 「う、うん!!」



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