カゼマチグサ

 某所にて、風待という精ありけり。祠に居てその地に風や幸運び続けたり。その数十二三にも及ぶ故、順を追いて説明す。

 先頭に立つは首領の「花待」なり。猫の耳に猫の四肢を持ち、風待草の大なる髪飾りを湛え、他のカゼマチを率いるなり。人間と遊ぶを好み、これを妨げるを怒りたもうことあり。幼くあれど力は強し。用心すべき。

 次に続くは「緒兎姫」なり。おとひめと読む。兎といへど、狐の子なり。親を亡くし途方に暮れたれしところを、花待に拾われてカゼマチになれり。頬に花の形した痣あり、尾は風待草の枝によく似たり。

 最後に来しは「花羽織」なり。柴犬の耳、四肢を持ち、その口は縫い付けられ言葉を発さず。捨て置かれたる犬の屍、また彼女に拾われてカゼマチとなりけりという民話、某所にありけり。三体のうち最も気性荒き。崇神なれば、首領の花待を共に祀るべし。

 彼女らカゼマチ。見ゆる者、特に子供に多くあり。花羽織などは大人は恨みしかど、子供は好む。彼女らを見た者、忽ち身上良くなり、またその者が船人ならば、良き風が日ごろ吹くべくなりぬ。

 彼女らを祀る祠、某所にて数多あり。多くは花待または緒兎姫を祀れど、稀に花羽織を祀りし祠あり。田畑または漁港などに多くあり。

 彼女ら三体のほかにもカゼマチ数多あり。されど彼女らのように各所を歩くことはせず、祠に居てその地に風運び続けたり。
1/4ページ
スキ