第一章:運命の出会い

 私は本多真城ほんだましろ

 二十九歳の会社員である私の趣味は読書とカラオケ、そして音楽制作だ。

 作った曲はどこかに掲載したりとは無く、作ったら作っただけパソコンにフォルダが増えていくだけで、一度消化するために何処かで発表してみてもいいんだよなとは思っている。
やはり、そうなるとバンドだろうか?

 中二から愛でているベースは歴十五年。
 高校の時には軽音部でバンドを組んでいたけど、それ以来そういった活動はしていない。

 そんなことを友人に話すと、「あんたベースボーカルやったら?」と言われる。
 ベースボーカルは難しいんだけど、やってみたさはあるよね。
 私、歌うの好きだし、どうやら、声質も良くて歌もうまい?らしい。
 よくわからないけど、私が歌うと、女性陣がうっとりしてたり、「あ……、腰砕けた……」って男女問わずに言われたりなんて事案もあったりして、自意識過剰じゃない私でもそういうことに気付くことになった。

 ちなみに、少し悩んでいるのが、男性の同僚とか先輩に飲み会の二次会とかで「いやぁ、イケボの歌姫がいてくれると女子がいっぱい来てくれて助かるわぁ」と小突かれることである。
 いや、イケボの歌姫ってなんやねん。
 あげく、「女子にモテていいな」とか「人生イージーモードやん」とか言ってくる男性がいて頭を抱えている。

 そもそも、私の恋愛対象はあくまで男性。
 なので女性にモテても、そんなに、って感じなんだよな。
 人に好かれているという点ではありがたい、という感想だが、その執着心でストーカーでもされてみろ、という気持ちでいっぱいだったり。
 私は大学新卒で今の会社に入ったが、それからでも五回以上はストーカー被害に遭っている。
 我、只の会社員ぞ。アイドルや俳優やないんやで……。

 一体、この事のどこが人生イージーモードなのだろうか。
 男性からは恋愛対象に診られないし、ストーカーには遭うし、むしろ人生ハードモードやん。あ、この話で一曲書けそう。ってノートを取り出す私も大概だな。

 そんな私のイケメン(自分で言うのか)エピソードがある。
 丁度一か月前の話だ。

 その日、私は黒のワイドパンツにユニセックスの柄シャツ、白のごつい革靴、クラッチバッグで出かけていた。
 確か、友人の結婚発表とかの集まりがあって、我ながら張り切ってカッコイイ格好したもんだ、と思ったものだ。
 本当はシフォンワンピースとか着たいんだけど、そういう女の子女の子した格好をすると、女装した男子感が否めない。悲しいかな。私はメンズライクな格好をするしかないのだ。
 まあ、男っぽい服をして街の女子トイレ行くと不審者見る目で見られるけどねぇ。悲しいかな。

 アハハ……。
 そう、私は宙ぶらりんだ。

 さて、そんなことは一旦置いといて。

 その日、十九時頃、私は駅ビルの地下街にいた。
 集まりが梅田にあり、ミナミ方面に帰る私は地下鉄の梅田駅を目指してて、ふと、前方に可愛いロリータ服のお姉さんがいることに気付いて、「わぁ、可愛い……」と後姿なのに思ったのだった。
 あのロリータ服はピンク基調だし、甘ロリかな?
 いいなぁ。そう思っていたらロリータ服のお姉さんが急に立ち止まる。

 なんだ?と思っているとどうやらガラの悪い男たちにナンパされているらしい。
 いや、可愛いもんな。ロリータ。
 私も着たいぞ、ロリータ。

 私はどうしようか迷ったが、お姉さんが嫌がって困っているらしいので、小走りでお姉さんの元へ向かった。

「ゴメン、待った?」

 ロリータ服のお姉さんは一瞬びっくりしていたが、すぐに私の意図に気付いて、私の後ろに隠れた。いや、可愛いな。

「うちの連れに、何か?」

 私は出来るだけドスの効いた声を出す。
 男たちは私を見て、「ああ……この男相手じゃ無理だわ……」と呟いて何処かに去って行った。まあ、男たちはガテン系で私はその真逆だもんな。
 ってか、引き際をわきまえてるナンパを初めて見た。潔くていいよ、あんたら。

「あの」
「あ、すみません、勝手に」
「いえ!助かりましたぁ!」

 この人、見た目めっちゃ可愛いのに、声かっこいいなぁ。夢が持てる。

「あの」
「はい?」
「次、またあなたに逢えたら、それは運命ですよね?」

んんんんん?

 その日、お姉さんは笑顔でお礼を言って去って行ったが、なんだか意味深な事を残していった。


その後、仕事帰りにロリータ服の端が背後でヒラヒラするようになる。
 またか、私。乙女ホイホイすぎないか、私。
 我、前回のストーカーが解決して三か月後ぞ?!

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