2月5日
夢小説設定
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「あんたも聖杯を望んでるのか?見たところオレとそんなに変わらない年だが」
「まぁね。ちゃんと私利私欲のために聖杯を求めてるよ、私。」
「…そうか」
人通りが少なくなってきた。
通学路から外れたのだろう。
「衛宮くんに接触しようとしたのはね、あなたが一番倒しやすいって思ったからだったんだ」
「だろうな。オレが敵でもきっとそうする。」
「…自覚はあるんだ」
「魔力がほとんどないって?もう散々言われたよ」
「遠坂さんに?」
「ああ」
クスクスと笑いながら坂道を下っていく。
ああ、下校というものはこんなに楽しいものなのか。
友というものはこんなにも心温まるものなのか。
(彼となら…)
おなまーえは意を決して口を開く。
「……あのね、衛宮くん。お願いが一つあるの。」
「なんだ?言っておくが、マスターの協力関係ならお断りだ。」
つい先ほど、間桐慎二にも協力関係を求められた士郎は警戒心を強める。
「違うよ。ああ、でも結果的にはそうなっちゃうのかな。」
「ん?なんだ、聞くだけなら聞くぞ」
「うん、その…私――」
まるで愛の告白をするように、おなまーえは歯切れ悪く、顔を赤らめる。
世の中の人たちはこういう時どんな顔をして気持ちを伝えるのだろうか。
「私…あなたと――」
――お友達に
――ズキ
次の瞬間、刺さるような殺気を感じた。
「っ!よけろ!!」
士郎も何かを察知しておなまーえを押し飛ばす。
「わっ!」
「ぐっ」
おなまーえがいたところを銀色の光線が走る。
彼女を突き飛ばしたことで、士郎の肩にすり傷が入った。
「衛宮くん!」
「大丈夫、ただの擦り傷だ」
おなまーえは即座に態勢を立て直して周囲を警戒する。
今の攻撃は確実におなまーえを狙ったものだった。
分銅鎖のような武器は見覚えがない。
アサシンは今ランサーと戦っているし、そもそもヤツは柳洞寺の山門からは離れられない。
残るは一騎しかいなかった。
「ライダー…」
「……ふふふ」
艶やかな笑い声が聞こえる。
衛宮士郎は手負いの状態、おなまーえも丸腰(さらにいえば先ほどまで発作を起こしていた状態)である。
『ランサー!』
『っ!なんだ!』
『今来れる!?』
『わりぃ、早くても5分はかかる!』
向こうも向こうで苦戦しているようだ。
今ランサーの助力は期待できない。
この場は自分の力でしのがなければならないようだ。
おなまーえはガントの構えをとった。
「私が10秒稼ぐから、衛宮くんは逃げて」
「何言ってんだ、お前1人ここに置いてはいけない」
「衛宮くん、2度も同じこと言わせないで」
「ダメだ。逃げるなら一緒に逃げる。オレだって、聖杯戦争のマスターなんだ。」
パシッと腕を掴まれた。
「ちょ!」
士郎はおなまーえの手首を掴んだまま走り出す。
彼女はされるがままの状態だ。
「なにしてんの!」
「あーもう暴れるな!いいか、あれはライダーだ。あいつのことだ、さっきの腹いせにオレに怪我でもさせようって思ったんだろ。」
「は、腹いせ?」
「とにかく、お前のことを巻き込んじまったオレに責任がある」
そんなわけないじゃないか。
聖杯戦争においてマスターは各々独立しているもの。
たとえ他所の戦いに巻き込まれようが、それは単に己の力不足というだけだ。
(それ以前に、私はあなたを殺そうとしたのに)
先日、何も知らなかった衛宮士郎にランサーを差し向けたのは紛れもなく自分だ。
その彼に2度も助けてもらってしまった。
繋がれた手に熱がこもる。
「逃がしません」
「右に避けろ!」
「っ!」
ぐいっと手を引かれておなまーえは思わずこける。
「しまった!」
迫り来る鎖。
おなまーえは腰をついていて避けられない。
「っ!」
死を覚悟した次の瞬間。
――ガキンッ
彼女に迫っていた鎖は金属製の何かで弾かれた。
ライダーとおなまーえの間に割って入ったそれは周囲を警戒する。
「あなたは…!」
仄かに明るい空の下、一層輝く星のような髪。
貴族や王の気品すら感じる青。
「シロウ、そちらの女性を連れて早く」
「ああ、助かったセイバー」
水晶越しとは比べ物にならない魔力量におなまーえは言葉が出ない。
衛宮士郎は魔術師として心構えも力量もてんでなっていないが、このサーヴァントは違う。
それこそグランドのクラスに匹敵するのではないかと思うほどの実力者だ。
彼女は主人の危機を察知し、いち早く駆けつけたらしい。
殺気が収まった。
「……邪魔が入りましたね」
姿の見えないライダーはセイバーの介入が不都合だったようで潔く撤退した。
「…逃げ足だけは早いようですね。ただの牽制だったのでしょうか。」
セイバーは臨戦態勢を解く。