24. 星の下、花の影
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「ぷはっ…」
艶めかしい音を立てて唇が離れ、新鮮な空気が口から入ってくる。
「イイ顔。帽子屋さんもお姫様以外にそういう顔できたんだね。」
「ドブネズミが…」
「まだそんな口叩けるんだね」
聞いたこともないほど低いブレイクの声。
ヴィンセントが空いている右腕を大きく振るった。
「ガハッ…」
その拳はブレイクの鳩尾、ちょうど包帯を巻いているあたりに抉り込む。
「やっ…」
やめてと叫びたくとも、首はまだ掴まれたままでひゅーひゅーという音しか出ない。
(お願い、だれか止めて…!)
おなまーえの心の叫びは思わぬ人物の声によって叶えられた。
「そこまでだ、ヴィンセント」
赤いフードを深くかぶった大男。
確かダグという名前だった。
「なに?」
「グレン様がお呼びだ。すぐ上に来い。」
「グレンが…僕を…?」
予想外の呼び出しに、ヴィンセントは首を傾げた。
彼はおなまーえをブレイクの方に投げつけるとダグに連れられて牢屋を出て行った。
「…けほっ…」
「……」
2人は何も話さない。おなまーえは唇に手を当てた。
まだヴィンセントの感触が残っている。
(洗わなきゃ…)
おなまーえは思い立ったように立ち上がる。
こちらを見もしないブレイクを一瞥し、泣きそうな顔になりながらおなまーえも牢屋を後にした。
****
唇から血が出るまでゴシゴシと洗った。
ついでに先程拾ったエミリーも念入りに洗う。
「エミリー…」
泥のついていた部分は少し黒ずんでしまったが、乾けば目立たなくなるだろう。
「ちょっとほつれてる…」
ボロボロのエミリーは所々糸がほつれ、綿が飛び出していた。
あまり器用ではないほうだが、このまま渡すのも気がひける。
気分を紛らわす良い機会だ。
彼女は慣れない手で裁縫を始めた。
20分後。
なんとかエミリーはみれる形になった。
少し歪だが、先ほどよりはマシだろう。
「……でも、今更渡しには行けないよね」
人形は明日リリィから渡してもらおう、そう彼女は決めて床についた。
雨に打たれたからか、再契約した影響からか、疲労困憊の彼女はすんなりと夢の世界に誘われた。
この時、おなまーえは明日ブレイクやシャロンが処刑されるとは知らなかった。
end