21. 薔薇の花を集めて嘆きを歌いました
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「〜♩」
鼻歌を歌いながらおなまーえは道を歩く。
すっかり日も頂点に達したが、風がひんやりしているぶんそこまで暑くはなかった。
「ケビン、ケビン」
「何ですか、お嬢様」
「ケビンお花畑行ったことある?」
可愛らしくこてんと彼女は首を傾げた。
「いえ、シンクレア邸のお庭程度しか見たことはありませんネ」
「あのね、すごくたくさんあるの!お花でね、冠つくるの!」
「花冠ですか。フローライトのお嬢様から教わったのですか?」
「うん!」
フローライト家とはシンクレア家と代々縁のある家である。
シンクレア家同様穏やかな人柄なので、おなまーえやケビンの赤い目、即ち禍罪の子にも偏見を持たずに接してくれる。
世間ではまだまだそういった差別は完全には消えていないため、フローライト邸はおなまーえの唯一の外出先と言ってもいい。
「えへへ、楽しみ!」
その彼女がどうしても行きたいと強請ったのがこれから行く花畑だ。
どうやらフローライト家に遊びに行った際連れて行ってもらったらしい。
すっかりお花に魅せられた彼女は、誕生日を口実になんとか外出の許可を得たのであった。
「あ!見えた!」
おなまーえが走り出した。
「ケビン!いくよ!」
「そんなに慌てなくてもお花畑は逃げませんよ」
呆れつつもブレイクはおなまーえを早足で追いかけた。
「ほら!見て見て!ケビン!一面お花畑だよ!」
彼女の言葉に辺りを見渡す。
しかし一帯に広がるのは白と緑。
(花、畑…?)
ケビンは首を傾げる。
彼の想像していた花畑とはかけ離れた場所だ。
華やかさのカケラもない緑、時々白。
見渡す限り……うん、これは……
「クローバー畑…ですね…」
「うん!葉っぱ3つしかないんだけど、たまに4つのもあるの。それ見つけると幸せになれるんだって!」
少女は無邪気に笑いかけてくる。
待て、この際クローバーが花に入るか否かは問題ではない。
ケビンは嫌な予感がした。
「……えっとー、お嬢様…?」
「ケビン!」
「ハイ、なんでしょう…」
この大量のクローバーの中から、まさか…まさか……
「一緒に探そう!!」
「デスヨネー」
****
陽も傾き出した頃。
もうおなまーえはとっくのとうに飽きて花冠を作り始めていた。
フローライトのお嬢様に教わったのだろう、器用に編み込んで着実に冠の形が出来上がりつつある。
「……お嬢様ー、そろそろ帰りませんかー?」
「えー、ケビン四葉見つけたー?」
「いや、まだですが…」
じゃダメー、と彼女は頬を膨らませて転がる。
「ああ、もう。そんなに転がるとせっかくのお洋服が台無しですヨ。」
「……」
転がったおなまーえは返事をせずぼーっと空を見つめていた。
空の半分が赤色で、半分は暗い青色。
その境目は水と油を混ぜたように複雑に絡み合っていた。
彼女はそれをじっと見つめる。