20. 貴方が私にキスをするたび私の心は苦痛に喘ぎました
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おなまーえの案内で、バスカヴィルは誰にも見られずにパンドラに侵入することができた。
「まずはルーファス様のお迎えにあがります。封印場所の在り処はあのお方が知ってるので。」
「回りくどいやり方するのね。貴女が知っていればわざわざ寄り道しなくて済むのに。」
「ルーファス様も見届けたいのですよ。なにせ知の探求者ですからね。」
一行は彼がいるであろう庭を目指す。
予め落ち合う場所は決めていた。
歩くこと数分。
彼は予定通り庭の中心にいた。
隣にはシェリルもいる。
どうやらまだルーファスはレインズワースの鍵を手に入れていないようだ。
草木の陰に隠れておなまーえとバスカヴィルの民はジッと息をひそめた。
「ねぇ、ルー君。覚えてるかしら…?遠い昔に、私達約束したわよね?」
このような状況だというのに、やはりシェリル様は上品に笑った。
これからルーファスがやることを、彼女はどう思うだろうか。
「レインズワースとバルマ、お互いに見ているものが違ったとしても、二度とサブリエのような悲劇が起こらないよう、共に四大公の務めを果たしましょうと。」
シェリルは艶やかにため息を吐く。
彼女は何も知らない。
これからルーファスに裏切られることになるだなんて。
(何で私いっつもルーファス様に似るんだろう…)
好きな人はレインズワースの関係者。
どんなにアピールしても相手には恋愛対象として見向きもされない。
そして今、揃って愛する人を裏切ろうとしている。
「ねぇ、まだなの?」
隣のロッティが痺れを切らしているのがわかった。
おなまーえはもう一度を2人の会話に耳を傾けた。
(そろそろ行くか。ルーファス様は私とバスカヴィルがここにいることをわかってないし…)
これはバスカヴィルから課せられた試験のようなもの。
これ以上長引かせてボロを出させるわけにはいかない。
おなまーえはバスカヴィルに合図を送ると、瞬歩の如き早足で二人の前に飛び出し膝をついた。
「ルーファス様、お迎えにあがりました」
おなまーえと2人を囲うようにバスカヴィルが降り立つ。
突如現れたおなまーえとバスカヴィルにシェリルは動揺を隠せない。
「おなまーえちゃん!?それに、あなたたちは…!?」
イライラしたロッティがシェリルを無視してルーファスに話しかけた。
「いつまでグズグズしてんのよ。私達バスカヴィルがあんたを認めてあげるための条件、忘れたわけじゃないわよね?」
「……」
「ルー…」
「約束か」
シェリルの言葉を遮ったルーファスは扇を高く振り上げる。
「だからお主は甘いというのじゃ」
そしてその扇を彼女の肩に勢いよく振り下ろした。
****
一行はぞろぞろと階段を降りていく。
この国には沢山の地下通路がある。
貴族が争いをしていた時代、即ち5〜60年前に行き来のために使用されていた通路だ。
そしてこの通路は封印を守る術者しか知らなかった場所。
それ故に緑が生い茂り、ひんやりとした湿気に包まれていた。
「こんなところがあるだなんて…」
ロッティも驚きを隠せない。
通路の途中途中には吹き抜けがあった。
その度に壁中の蔦を剥がして扉を探さねばならず、正直なところ予定より大幅に遅れをとっていた。
「……おなまーえ」
ルーファスはおなまーえの名を呼んだ。
隠し通路探しを手伝っていた彼女は手を止めて主人の元に駆け寄る。
「どうされました、ルーファス様」
「何、以前汝に指示したことを復習しようと思ってな。」
「……?…はい…」
ルーファスはこちらを見てニヒルな笑みを浮かべた。
「帽子屋が目を覚ました故、ヤツの相手は汝に任せる。汝の騎士ならば互角に渡り合えるじゃろうて。」
赤の騎士の能力は他のチェインの能力の無効化。
即ち、チェイン殺しと謳われているブレイクの帽子屋は、おなまーえの前に限りほぼ無力となるのだ。
「ブレイクさ……彼は目を覚ましたんですか。全く、ルーファス様はどこからそんな情報を仕入れてくるのやら。」
おなまーえは苦笑いをする。
「まぁ、承知しましたよ。そのための"餞別"ですものね。」
ルーファスから受け取った美しい剣。
おなまーえは腰に下がっているそれを優しく撫でた。