Chapter.7
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団子状態になった一行の上に弱ったカブが乗っかる。
「カブ、大丈夫!?すぐ新しい棒を見つけてあげるね…!」
ソフィーがカブを起こしたが、彼はぐったりとしていて元の時のような元気さが失われていた。
「……カブ、ありがとう!」
ソフィーが目を潤めて口元にキスをした。
するとカブが震え、クルッと一回転すると金髪の好青年へと姿を変えた。
「ええっ!?」
一行はおののく。
おなまーえもギョッとして彼を見た。
「ありがとう、ソフィー。私は隣の国の王子です。呪いでカブ頭にされていたのです。」
「愛する者にキスされないと解けない呪いね!」
「その通り。ソフィーが助けてくれなければ、私は死んでいたでしょう。」
「いい男だねえ」
ハウルが唸った。
咄嗟に自分の今の姿(羽を生やした姿)に羞恥心が湧き、おなまーえは岩の裏に姿を隠す。
「……うるさいな、なんの騒ぎ?…うっ!こりゃひどい、体が石みたいだ。」
「そうなの!心って重いの!」
少女の姿のソフィーが目を輝かせてハウルに飛びついた。
「あれ、おなまーえは…?」
「おなまーえなら……あれ?」
ソフィーとハウルが辺りを見渡すと、岩の後ろに隠れている金髪を発見した。
「何してるんだい、こっちに来なよ」
「イヤ……恥ずかしい」
「どうして?とても綺麗だったじゃないか」
「………」
おなまーえは顔を赤くしながら羽を広げ、ハウルの正面に着地した。
変身をとき、元の姿に戻る。
衣服の背中部分には両翼が生えたときの穴が二つできていた。
その奥には焼け焦げた跡がチラリと見える。
「………」
「とっても綺麗だったよ。けど、背中のところ焦げてしまっているね。」
「別に、気にしないもん」
「僕が責任を取る」
「責任なんかで私のそばにいて欲しくない」
「僕がいたいからいるのさ。そろそろ素直におなり。」
優しく頭をポンポンと撫でられた。
大きくてあったかい手。
藍色の目は真っ直ぐにこちらを見ていた。
「………ハウルが女遊びをやめたらね」
「もう他の子とは縁切ったって言ったのに、信用してもらえないなぁ」
「日頃の行いよ」
仲良くする2人を見ていられないと、ソフィーはおなまーえたちに背を向けた。
吹っ切れたと言ったとはいえ、いざ目の前で2人が仲睦まじく会話をしていると心臓の奥がキュッとしまる。
「……ねぇ、ソフィー」
一連の流れを見ていたマルクルがソフィーに近づき、その腰に抱きついた。
「なぁに、マルクル」
「僕、ハウルさんみたいにカッコよくないし、魔法もまだ上手じゃないけど、絶対にソフィーのこと幸せにするから。」
「え…?」
「だから僕が大人になるまで待っててね」
それは彼の精一杯の告白であった。
少年の声は震え、決して格好の良い告白ではなかったが、その勇気と誠意は本物であった。
マルクルから恋愛対象として好かれているとは思わなかったため、ソフィーは面食らった顔をしたがすぐに頬を緩めほころばせた。
「……ありがとう、マルクル」
それをじっと見つめるのはカブ頭であった王子と荒地の魔女。
「ソフィーの気持ちは分かったでしょ。あなたは国へ帰って、戦争でも止めさせなさいな。」
「そうさせていただきます。戦争が終わりましたら、また伺いましょう。心変わりは人の世の常と申しますから。」
「あら良いこと言うわねえ。じゃああたしが待っててあげるわ。」
そのあとおなまーえが一人一人、上の丘まで持ち上げて一行は無事に地に足をつくことができた。
「ぜぇ…ぜぇ…」
「ごめんなさい、おなまーえ」
「だい、じょう、ぶ…」
「じゃなさそうだけど」
最後にハウルを引き上げておなまーえは丘に突っ伏した。
純白の羽がくったりとしている。
「カルシファーだ!」
マルクルが空を指差した。
おなまーえは仰向けになり、横に転がったまま空を見上げる。
「戻ってこなくても良かったのに」
「オイラ、みんなといたいんだ。雨も降りそうだしさ。」
「いーんじゃない?賑やかな方が楽しいでしょ、ハウル」
「そうだね」
ハウルもまたおなまーえの隣で地面に転がった。
それを真似してマルクルもソフィーもコロコロと転がる。
「ハウルさんがお父さんだとして、おなまーえさんがお母さんだね!」
マルクルが手を上げながら無邪気に話しかけて来た。
「え、ちょっと待って。その設定で行くとマルクルが私たちの子供でしょう?ってことはソフィーはその嫁で……私この歳で姑なの……!?」
「あっはははは!」
「うふふふ」
「ハン、魔女に年齢なんて関係ないわよ」
「さすが、荒地の魔女様は言うことが違うわ〜」
「あはははっ!」
「ふふっ」
家族の笑い声が朝焼けにいつまでもいつまでも響き渡った。
fin