Chapter.7
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城の残骸を見つけたのは夜が明けた後だった。
蹲るソフィーとマルクルと荒地の魔女。
案山子のカブが進行方向を見張っている。
元の城の面影はなく床に足が生えただけで、それでもよろよろとちゃんと歩いていた。
顔を上げたマルクルがこちらに気づき、ソフィーを起こして指を指す。
どしんという振動とともにハウルが床に着地した。
おなまーえをそっと下ろすと彼は力なく横に倒れ、ハラハラと羽根が舞い落ちていく。
一同は彼に駆け寄った。
おなまーえがうつ伏せの彼を仰向けにし、自身の膝に頭を乗せた。
「死んじゃった…?」
「ううん、大丈夫」
息をしていないのかと錯覚するほど、ハウルの胸は小さくしか動いていなかった。
「……ソフィーさん、ここからはあなたしかできない。あなただからできる魔法。」
「うん、任せて」
ソフィーは荒地の魔女の元へ歩くとしゃがみ込んで目線を合わせた。
「おばあちゃん」
「あたしゃ知らないよ、何にも持ってないよ」
「お願い、おばあちゃん」
昨夜おなまーえがソフィーにしたように、ソフィーは荒地の魔女を優しく抱きしめた。
必死の思いが伝わったのか、彼女は迷うように目を細める。
「……そんなに欲しいのかい?」
「うん」
「仕方ないね。大事にするんだよ。」
「うん」
「ほら」
荒地の魔女が差し出したのは弱々しく青白い炎を放つカルシファー。
そしてその核となっているハウルの心臓だ。
「ありがとう、おばあちゃん」
ソフィーはそれを受け取ると彼女の頬にキスをした。
「カルシファー」
「ソフィー、くたくただよ…」
「心臓をハウルに返したら、あなたは死んじゃうの?」
「ソフィーなら平気だよ、多分。オイラに水を掛けても、オイラもハウルも死ななかったから…」
「やってみるね」
ソフィーの魔法は命を吹き込む魔法。
この魔法は天性の才能と人柄が成せる技であり、ソフィー以外の者は誰もできない。
彼女はカルシファーを胸元に寄せ、ハウルの心臓の音をしっかりと聞いた。
「暖かくて、小鳥みたいに動いてる」
「子供の時のまんまだからさ」
「どうか、カルシファーが千年も生き、ハウルが心を取り戻しますように…」
彼の左胸にソフィーがカルシファーを押し込めた。
青白い炎が散って消えた。
数秒も経たないうちにまばゆい光がハウルの心臓から溢れ出る。
その光は飛び上がると輝く星となりソフィーとおなまーえの周りを飛び回った。
「生きてる!オイラ自由だー!」
星の子に戻ったカルシファーは空高く舞い上がると嬉しそうに遠くへ飛んで行った。
「んん…う…」
「動いた!生きてる!」
「よかった…」
ハウルが目を覚ました。
しかし安堵したのも束の間、ぐらっと一行の体が傾いた。
「わっ!?」
違う。
正確には床が傾いた。
「カルシファーの魔法が解けたんだ!」
彼がいなくなったことにより、かろうじて保っていたバランスが崩れてしまったのだ。
床を支えていた右足が大きく曲がり、そして耐えきれずに崩れはじめた。
「っ!」
おなまーえはとっさに羽を広げて飛び、右側に傾いた床を支えるが、重さに耐えきれなかった左足も崩れ、床が落ちてしまった。
「わぁぁ!!」
板はスキー板のように斜面を滑り落ちて行く。
おなまーえは慌ててそれを追いかける。
(間に合ったとしてどうする…!?板を止める手段なんてある!?)
彼女の額から冷や汗が落ちた。
次の瞬間、案山子のカブが滑り行く床の地面の先頭部分に立ち落下スピードを抑えてくれた。
「カブ!」
彼の脚部分の木が石によってどんどんと削られて行く。
やがて減速した板は崖に到達したが、奇跡的に岩と崖の側面に板が引っかかり間一髪助かった。