Chapter.3
夢小説設定
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――シャリンッ
ドアノブが黒色を示した。
程なくしてくったりとした様子のハウルが入ってくる。
「ハウルさん、お帰りなさい!」
「おかえり、ハウル」
「……」
「王様から手紙が来てますよ。ジェンキンスにも、ペンドラゴンにも!」
「あ、私には何か来てた?」
「はい!明日王宮に直接持ち込んでくるよう言われました!」
「明日かー」
まだまだ余裕がある。
よかったとおなまーえは安堵した。
ハウルは何も言わずに料理を作っているご老人に歩み寄る。
「……カルシファー、よく言うことを聞いているね。」
「おいらを苛めたんだ!」
「誰にでも出来ることじゃないな。あんた、誰?」
ハウルは気怠げに、優しい声で問いかけた。
老人は緊張しているようで声が上ずる。
「あ、あたしはソフィーばあさんだよ。ほら、この城の新しい掃除婦さ。」
(ソフィー!?)
おなまーえはその名前に大きく反応した。
ハウルも明らかに態度を変える。
「貸しなさい」と言うと、おたまを持つソフィーの手を上から握った。
「ふあっ…」
「あとベーコン3切れに、卵を4個頂戴」
「あ、えっ…」
ソフィーはベーコンをフライパンに乗せ、卵を一つ一つ手渡しした。
卵を割っては殻をカルシファーに食べさせる。
「うまい……あむっ、うまっ……」
「掃除婦って、誰が決めたの?」
彼はソフィーの方を一切見ずに問いかけた。
「そりゃあ、あたしさ。こんな汚い家はどこにもないからね。」
「ふーん」
ベーコンはすぐに火が通った。
ハウルは半分振り返っておなまーえの名を呼ぶ。
「おなまーえ、皿!」
「はいはい。マルクル、お茶をお願い。」
「はーい」
「ソフィーさんもどうぞ。こっちに座って。」
机に乗っかっている本を押して4人が座れるスペースを確保する。
皿と湯のみ代わりの茶碗を並べた。
「選んで!汚れてないのこれしかないんだ」
「…仕事はたくさんありそうねぇ」
マルクルがフォークとスプーンをソフィーに見せた。
正直、どれもとても汚い。
彼女はその中でも1番汚れが少ないものをセレクトした。
ハウルがパンを切っている間におなまーえはチーズを切ってその上に乗せる。
「マルクル」
「はい」
彼がパンを配るのでその上にポコポコとチーズを乗せた。
「ソフィーさん」
「あ、ありがとう」
「おなまーえ」
「どうも」
おなまーえもハウルの隣に座り、お茶碗を持ち上げた。
「諸君、いただこう。うまし糧を。」
「うまし糧!久しぶりですね、ちゃんとした朝ごはんなんて!」
「最近もはやお昼ご飯だったからねー」
ずずっとお茶を飲み、丁寧にベーコンを切って口に運んだ。
ジューシーな香りが口いっぱいに広がる。
「はぐ、むっ……むぐ……」
横のマルクルは皿から直接ガッついていた。
「で、あなたのポケットの中のものは何?」
「へ?」
お茶を一口飲んで、ハウルはソフィーに問いかけた。
目玉焼きを食べようとしていた彼女はそれをポトっと皿に落とす。
「……何かしら」
不思議そうな顔のソフィーのポケットから出てきたのは四つ折の赤い紙。
「貸して」
ハウルが手を出し、彼女がそれを渡そうとした瞬間、バチっと紙から火花が上がりテーブルに落ちた。
中に書かれていた焼印だけが残り、禍々しい呪いが感じられる。
「ああっ!焼き付いた!ハウルさんこれ…!」
「手紙だねぇ」
「うん。とても古い魔法だよ。しかも強力だ。」
「荒地の魔女ですか!?」
おなまーえとハウルは肩を付き合わせてその焼印を読む。
「『汝、流れ星を捕らえし者、心なき男。汝、それを誑かし魔力を蓄えんとする者。お前達の心臓は私のものだ。』ですって。」
「……テーブルが台無しだね。」
彼は焼印を覆うように手を乗せると力を込めてそれを拭き取った。
「ああっ!」
「すごい、消えた!」
「焼け焦げは消えても呪いは消えないんだ」
そう。
今彼はテーブルについた呪いを自分に転写させた。
ハウルの右手が焼け焦げているのをおなまーえは見逃さなかった。
彼は立ち上がるとおなまーえと自分の皿の中身をカルシファーに食べさせる。
「諸君、食事を続けてくれたまえ。カルシファー、城を100キロほど動かしてくれ。」
「むっ、むぐ、うまっ…」
「私はいつもの?」
「うん」
「最近多くない?」
「それ程、外が騒がしいってことさ」
おなまーえは食べかけのパンを口に放り込み、ハウルに続いて階段を登った。
「あぁ、それと風呂に熱いお湯を送ってくれ」
「えーっ、それもかよー!」
カルシファーの文句を聞きながら2人は寝室に向かった。