Chapter.1
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Chapter.1
ふかふかのベッドで目を覚ました。
隣には揃いの金髪の彼がすやすやと心地好さそうに寝ている。
憎たらしいくらい端正な顔だ。
おなまーえは部屋の隅に貼り付けてある二枚の入学証明証に視線を移してため息をついた。
魔法高等学校の生徒は、入学の際にサリマンの指示のもと国のために尽くすことを誓約させられる。
また魔法の優劣を補うため、基本的にはツーマンセルを組まれて、そのペアはどちらかが死ぬまで変わらない。
これは魔法高等学校が始まってからの変わらない伝統だったし、例に漏れずおなまーえもまたツーマンセルを組むことになった。
成績優秀。
頭脳迷彩。
才色兼備。
まさに優等生の具現化とも言える"彼"とのペアを発表された時は、正直ショックを隠しきれなかった。
おなまーえは自分が"彼"と組まされた意味をすぐに理解したからである。
おなまーえは生まれつき魔術回路だけは恵まれていた。
全科目を見てもそれなりの好成績を納めていたし、どちらかといえば優秀な方だと自負していた。
だがその小さな自信は、得意科目の魔法具作りを除いてしまえば、攻撃魔法も結界魔術も回復魔法も、"彼"の前では凡庸なものになってしまった。
ツーマンセルの目的は魔術の優劣を補うためのもの。
魔法に関して欠点のない"彼"に私があげられるものはただ一つしかなかった。
そう、魔力である。
私はいわば充電器である。
充電器が端末に電力を流し込むように、人より恵まれた魔力を"彼"という兵器に注入するのだ。
女ということも国にとっては都合が良かったのだろう。
なにせ魔力供給は互いの体液の交換、即ち情事のことを示すのだから。
かくしておなまーえという人物は、魔力供給という役割のためだけに、"彼"に充てがわれたのである。
「よい、しょ」
暖かい毛布を少しめくっておなまーえはひんやりとする床に足をついた。
ぐっと大きく背伸びをして、昨夜ベットの下に落とされた下着を拾い身につける。
その上に黒のロングカーディガンを羽織り、簡単に髪を結うとおなまーえは静かな足取りでその部屋を出た。
ベットの上の彼はまだ規則正しい寝息を立てていた。
早朝の城の中にパタパタと足音が響く。
城と聞けば煌びやかなイメージがつきものだが、城は城でもここはゴミ屋敷の城である。
虫、鼠、埃の温床となっているため、スリッパがなければとてもではないが歩きたくない。
もちろん何回か掃除は試みたが、このだだっ広い城を定期的に清掃できるほどおなまーえも暇ではないため、結局このような有様となっている。
「カルシファー」
「…おう、今日も早いなおなまーえ」
暖炉に声をかければ小さく灯っていた火が大きく背伸びをした。
何を言っているかわからない?
いや、文字通り背伸びをしたのだ。
どうやらこの炎の彼もまた、寝起きのようだ。
「工房の風呂にお湯。それから第1高炉温めといて。」
「温度は?」
「手始めに150℃。1時間したら70℃に下げて。じっくり焼くから。」
「へいへい」
薪を3本ほどくべて、おなまーえは自身の部屋に入っていった。
部屋といってもここには生活する設備はほとんどない。
強いて言うならおなまーえ専用のお風呂があるくらいだ。
この部屋は基本的におなまーえの仕事場。
いわゆる魔術工房である。
この部屋の中だけは、おなまーえのプライベート空間が保証されている。
というのも部屋全体に結界を張っているからである。
まだベットで寝ているだろう"彼"の手にかかれば簡単に解けてしまう結界だが、その弟子のマルクルや、虫・鼠などといった生物は入ってこれない。
"彼"も必要以上におなまーえに干渉してくることはないので、まず誰も入ってこないのだ。
「うー、さむっ」
先程身につけた下着を脱ぎ捨て、カルシファーが張ってくれたお湯に足を浸からせる。
「うん、いい温度」
狭いバスタブだが、おなまーえは存外このサイズを気に入っていた。
この城はもともと"彼"が建てたもの。家主ももちろん"彼"である。
万が一でも浴室で鉢合わせなんて御免被る。
最低限、浴室は分けること。
それからおなまーえ専用の工房を作ること。
この二つが私がこの家に住む際の条件だった。
え?居候している身で条件まで出しているのか、ですって?
まぁ確かに一般的に考えたら少しおかしいかもしれないが、これにはちょっとした理由がある。