とある一日のお話
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とある一日のお話
閑話休題
【安室とコナンの対話】
「安室さんさ、この前おなまーえさんのこと好きって言ってたよね」
「それがどうしたんだい?コナンくん」
喫茶ポアロは珍しく客がいなかった。店員も安室だけで、梓はもう上がっている。
「あの時、おなまーえさんがゼロを崇拝しなくなったら告白するって言ってたよね。あれってどう言う意味?」
回覧板を持って来たコナンは先日からの疑問を投げかけた。はくちょう墜落直前の言葉。生死がかかった状況で、彼はおなまーえのことが好きだが告白はしないと言った。その言葉の意味がイマイチ少年には分からなかった。
「あぁあれか。全く、君は本当に詮索好きだね。」
安室は注文されたアイスコーヒーを差し出しながら苦笑した。コナンは軽く感謝の言葉を述べてカウンターに着く。
「言葉の通りだよ。彼女は僕個人じゃなくて、ゼロという存在に執心してるんだ。」
「何が違うの?」
「コナンくんにはまだ早い話さ」
「……ふぅん」
納得がいかないという表情だった。好きなら好きと伝える、小学生だからこそのまっすぐな感情。でも大人はそううまくはいかないものなのだ。
きっとおなまーえは自分のことを慕ってくれているだろう。言葉の端々や行動からそれは察しがつく。しかしそれは降谷零に対する恋情ではなくゼロに対する崇拝。
何が違うのかと問われると説明は難しい。ただ彼なりに考える違いとは『そこに相手の想いがあるか否か』である。結局のところ、崇拝は崇め奉って自分を満たす行為でしかないのだ。
彼女は安室がどんな行動をとろうが肯定してくれる。素晴らしいと褒め称え、ついて来てくれる。それはとてもありがたいことだし仕事をする上では何ら支障はない。
(でも、僕が求めているのはそういう関係じゃない)
コナンがアイスコーヒーを飲み干した。
「安室さん」
「なんだい?」
「今日ね、蘭姉ちゃんたちとおなまーえさんで女子会してるんだって」
「……なぜそれを僕に?」
「安室さんとの出会いとか、恋の話を根掘り葉掘り聞くって張り切ってた」
「あぁ……」
コナンは財布を取り出しコーヒー代を丁度支払うと「ごちそうさま」と言って出て行った。
「恋、ね」
安室はかつての初恋の人を思い出す。綺麗で、いつでも優しく手当てしてくれた女性。組織に利用され殺されてしまった女性。
(もう、失いたくない)
日本という国に心身を捧げ、他人の幸せを心から願った彼が、唯一望んだ愛しい存在。おなまーえこそは大事にしなければならない。エレーナやスコッチのように、これ以上組織に大切なものを奪われてなるものか。
(僕にとっても、彼女は一種の崇拝対象のようなものなのだろうか)
相手を大切にするあまり、自身の感情が埋もれてしまった。強すぎる想いは感情すらも覆い隠してしまうのだ。安室はそれをわかっていながら潔く受け入れた。
(今はこのままの関係でいい)
カランカランと入口のベルが鳴る。
「いらっしゃいませー」
安室透は笑顔を貼り付けて仕事に戻った。