Grand Order - はじめまして《後》
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「敵影、確認しました!」
「おう、かかってきな!」
敵はアーチャーのゾンビとキメラ。
マシュが盾となってくれている間におなまーえとクー・フーリンが後ろから攻撃を与える。
「っ!」
おなまーえは正面のキメラに気を取られて、木の陰に潜んでいたアーチャーに気がつかなかった。
矢が3本、こちらに向かってまっすぐ飛んでくる。
英霊の身なのでこれくらいの攻撃では死にはしないだろうが、痛みは否応なしに感じる。
せめて致命傷だけでも避けようと体を捻ったその時。
「伏せな!嬢ちゃん!」
「っ、うん!」
バッと伏せた瞬間、矢は紅い槍で落とされた。
「おらよ!」
着地した彼はキメラに一撃加えると、その奥のゾンビに投擲をする。
「さすがです、クー・フーリンさん!」
マシュが盾を下ろした。
敵は素材を落として消滅していく。
「ひとまずこの辺りは沈静化できました、ドクター」
『ああ、よくやった。だけど奥の方にもう一個大きい魔力反応がある。キメラのものと似てるけど、さっきよりもずっと強い。それで最後だけど、用心して。』
「わかりました。先輩!あと一体だそうです!」
「わかった!気をつけて進んで!俺もすぐに行くから!ほら頼光さんも拾って!」
「仔鹿!私のチケットちゃんと配ってくれてる?さっきから全然減ってないじゃない!」
「配ってる配ってる!だからほら、エリちゃんも手伝ってってば!」
後衛は後衛で素材回収に忙しそうだ。
前衛だけで先に処理した方がいいだろう。
「行くぞ、嬢ちゃんたち。こっちには盾の嬢ちゃんがいるし、あいつはドクターの案内があるから大丈夫だ。」
「はい、行きましょう」
「い、いいのかなぁ」
おなまーえは後ろをチラチラと見ながら、2人に続いて先に進んだ。
湿っぽい洞窟の最奥には、まるで番犬のように何かを守っているキメラがいた。
――グルルッ
そいつは明らかに先ほどと格が違った。
「っあ!!」
「マシュ!」
盾役のマシュが膝をつく。
「野郎、相当魂食ってやがるな」
そう言うランサーもボロボロだ。
2人が庇ってくれたのでおなまーえに被害は少ないが、状況は良くなかった。
(せっかくサーヴァントになっても、これじゃあ何も変わらないじゃない)
おなまーえは唇を噛んだ。
「おまたせ!」
タイミングよく藤丸が追いついてきた。
マスターがいれば宝具が使える。
彼に向かって力一杯叫んだ。
「マスター!私に宝具の使用許可を!」
「わかった!おなまーえの宝具の使用を許可する!」
それは宝具なんて大それたものではない。
生まれた時から外に出れなかった私が、少しでも外に触れたいと望んで身につけた魔術。
全スキルを使って魔力を解き放った。
「遠見の魔術、最大解放!」
おなまーえのありったけの魔力リソースを仲間に割り振るこの宝具は、それなりにデメリットがある。
味方の体力の回復、スキルチャージの減少、クイック威力アップの代わりに、自身の体力を半分持っていかれるのだ。
「っ、はっ…」
「おなまーえさん!?」
膝をつく。
傷の治ったマシュが駆け寄り、クー・フーリンが驚いてこちらを振り向く。
「行って、ランサー」
マスターが来たことで、NPが溜まっている彼も宝具を放てるはずだ。
私にかまけて、せっかくの機会を無駄にするなと言う目を向けた。
クー・フーリンの赤い目に、かつての主人の姿が重なる。
( ――強くなったな、嬢ちゃん)
クー・フーリンは敵を見据えて、腰を低く落とした。
「だが、あとで覚えておけよ!」
蓄えたNPを穂の先に込める。
「この一撃、手向けと受け取れ!
――ズドンッ
紅い槍がキメラの心臓を貫く。
――グオオォ!!
獣の断末魔。
キメラは即死した。
「口ほどにもねぇ」
「ありがとうアニキ!」
落ちた素材を回収するマスターと後衛陣。
クー・フーリンはふぅっと息を吐いておなまーえの前に立った。
彼女はマスターに応急手当てしてもらったおかげでなんとか回復している。
「で、どういうつもりだ、女」
「……なんのことですか」
「とぼけんな。テメェの宝具。ありゃなんだ。」
「……宝具はその人の逸話や人生が形になったものでしょ。私の人生は水晶越しに誰かを応援することしかできなかった、ただそれだけ。」
「悲劇のヒロインぶってんじゃねぇ。そんな生き方のどこに誇りがあるってんだ。」
「……あなたに私の人生の何がわかるの」
「しらねぇな。お前のそんな人生なんて。」
口論を始めたおなまーえとランサーにマシュが戸惑っている。
おなまーえは早くこの話を終わらせたいが、あいにくランサーはまだ続けるようだ。
「アニキ、その辺でやめてあげてよ!」
マスターが止めに入っても、彼は睨みつける目を逸らさなかった。
「坊主も感じたろ。あの宝具はダメだ。」
「そりゃそうだけど、それだけでこの子の人生まで否定しちゃうのはダメだよ」
「普通の英霊にならここまで口出しはしねぇんだがな、コイツだけは別だ。どうやら英霊のなんたるかから教えなきゃならねぇみてぇだからな。」
ガンッと頭を殴られたように感じる。
誇り?英霊のなんたるか?
そんなもの、ただの魔術師にあるわけがない。
それを一番良く知ってるのは貴方じゃないか――と言おうとして思い出す。
彼は私のことを覚えていないのだと。
(っ、でもそんな言い方、ないじゃない…)
人に叱られるのは慣れていない。
彼の暴言と叱られたことによるショックで、ジワリと目の淵に涙がたまる。
「……マスター。今後この人とは組ませないで。」
「え」
「あ!?」
「ごめん、ちょっと今…無理……」
震える声でそれだけ言っておなまーえはエリザベートの元へ走る。
「いいわよ、おいで、仔犬」
「ありがとう、エリエリ」
「エ、エリエリ!?…ひ、響きとしては悪くないわね…」
おなまーえは彼女の元に身を寄せた。
「…………」
「…………」
その後、ドクターがレイシフトのボタンを押してカルデアに帰還しても、おなまーえとクー・フーリンは一切口をきかなかった。