Grand Order - はじめまして《後》
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「あなた、あの無駄に熱い男と何かあったの?」
エリザベートに連れられ、彼女の私室で休む。
ほのかなアロマの香りが、彼女の育ちの良さを感じさせた。
「あいつ、あんなデタラメな性格だけど、初対面の女子にはもう少し丁寧に接してたと思うのよね。」
「……うん、多分私が正規の英霊じゃないうえに、自己犠牲みたいなことしちゃったから気に入らないんだと思う」
落ち着いて考えてみれば、きっと心配してくれたのだろう。
優しい彼のことだから、そんな宝具は使うなと。
でも、だからと言って『悲劇のヒロイン』なんて言い方しなくてもいいじゃないか。
そこまで自分の境遇を肯定的には捉えていない。
「……たしかにあの宝具はどうかと思うわ」
「エリエリも?」
「ええ。でもアタシにはそれを否定する権利はないわ。否定するつもりもないし。私だって反英霊よ。自慢できるほどの人生じゃないわ。」
エリザベート・ハードリーは吸血鬼カーミラの幼少の姿。
処女の生き血を飲み、美を追求した、殺人鬼。
「英霊の矜持?誇り?そんなものブタどもに食べさせておきなさい。あなたはあなた。私は私。せっかく2度目の生なんだもの、好きなようにしなさいってば。」
その肯定的な言葉にすっと胸が軽くなる。
ああ、こうして悩みを相談できる友が私にもできたのか。
「……ありがとう。あなたと友達になれてよかった。」
「ほ、褒めても何も出ないんだからね!」
少し寄りかかれば、エリザベートは自慢の尻尾をくるりと巻きつけてくれた。
****
数日後、食堂にて。
「エミヤくん!」
「私の正体がわかった途端その呼び方にするのはやめてくれ」
「えへへ、エミヤくん!」
カウンターの端の席からアーチャー・エミヤの料理姿を眺める少女の姿があった。
「おはよう、おなまーえ」
「おはよう、ジャック」
「ごきげんよう、おなまーえさん」
「ごきげんよう、ナーサリー」
「おはようございます!おなまーえさん!」
「はい!おはよう、ジャンヌ」
「サリュ、おなまーえ」
「サリュ、バニヤン」
ぞろぞろと入ってきたちびっこ一人一人に挨拶をする。
「……すっかりここにも慣れたようだな」
「ふふ、おかげさまで」
「だがあの狗とは相変わらず口を聞いてないとみた」
「あはは…。でもエミヤくんは口出ししないでしょ?」
「ああ、しないとも。そんな犬も食えないような痴話喧嘩にはな。」
「痴話喧嘩じゃないよ。向こうは私のこと覚えてないだろうし、きっと今は本気で嫌ってるし。」
「…やはり君の勘違いなのではないか?あの男、たしかに英霊としてなんだのとはよく言ってるが、そこまで突っかかるのには何かしら理由があると思うのだが。」
「知らないもん」
カウンターから出された朝食を受け取る。
今日は温かいスープをリクエストした。
湯気が登るそれを一口すくってふうふうとさます。
――パクリ
口に広がるクリーミーな香り。
スパイスの効いた鶏肉。
食感のアクセントになるひよこ豆。
どれを取っても美味しい。
「美味しい!やっぱりエミヤくんは料理上手だね!」
「よければ今朝焼いたばかりのスコーンもあるが」
「あ、これも私がリクエストしたやつだね。食べる食べる。うわー、ベリースコーンだ。すごい…」
「それはアタシが作ったわん」
「キャットが?器用なんだね。本当に羨ましい…」
ここにきてわかったことがある。
おなまーえはごく普通の魔術師だ。
正規の英霊とは異なる。
故に、同じ正規ではない英霊との方がソリが合った。
子供達は除いて、エミヤ、タマモキャット、エリザベート。
主にこの3人と、キャスターのクー・フーリンと共に過ごすことが多かった。
「ん〜、バターが効いてて美味しい〜」
「おうともさ。イギリス組からもお墨付きよ。」
「エミヤくんといいキャットといい、こんながっつり胃袋つかまれたら、もう2人まとめてお嫁にもらいたいくらい」
「アタシはご主人がいるのでパス」
「右に同じだ」
「え?マスターのこと好きなの?」
「違う!却下だという話だ!」
「ふふ、わかってるよ」
おなまーえがホットコーヒーを飲み干そうとしたその時。
――ドガッ
カウンターの席3つ挟んだ先に、ランサーが腰をかけた。
「アーチャー、飯」
「…全く、君も難儀だな」
「早くしろ。マスターから急遽呼び出されてんだ。」
「…………」
まるでおなまーえのことなんて見えていないように彼は話す。
「……私もう行くね。エリエリと女子会する予定あるから。」
「む。ならこれを持っていけ。」
「ありがとう、キャット」
タマモキャットが残ったスコーンと紅茶の入ったポットをトレーに乗せてくれた。
「じゃ」
おなまーえは両手がふさがっているため脚を使って器用に扉を押し開けた。
最後まで彼と視線が混じることはなかった。