2月7日
夢小説設定
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「ランサー!」
血相を変えておなまーえは彼の腕を掴んだ。
気だるげな彼は、それでも心配させまいとニィッと笑う。
気を抜けば消えて無くなってしまいそうなほど危うい状態だ。
「わりぃ、しくった」
「む、無理はしないで…!霊体化は!?」
「今は駄目だ。嬢ちゃんをここから離脱させてからだ。」
「っ!」
「◼︎◼︎◼︎――!!」
咆哮が聞こえる。
小鳥や小動物が逃げ去る。
――ヤツはもうすぐそばにいる。
2月7日
昨日、ライダーが敗退した。
遠坂凛や衛宮士郎がやってくれたのかと思いきや、どうやらキャスターが一枚噛んでいたらしい。
2人は協定を結び、当面の目標はキャスターの討伐とした。
おなまーえはこれに参加しないと選択した。
2人のキャスターの討伐を手伝うより、漁夫の利を狙って、今のうちにバーサーカーを処理するという判断を下したのだ。
まだサーヴァントを一騎も仕留めていないおなまーえにはいよいよ焦りが出てきていた。
バーサーカーの真名は判明している。
自分も、以前よりランサーとの魔力パスをスムーズに使いこなせるようになった。
ランサーの言う、宝具レベルを上げる作業はされていないが、このレベルでも十分に倒せると考えていた。
だが――
「◼︎◼︎◼︎◼︎―――!!」
「っ、なんで…?あのバーサーカー、前より強くなってる…!?」
それは向こうも同じだったようで、おなまーえとランサーは明らかに圧倒されていた。
腹部から出血するランサーは息も絶え絶えで、今すぐ霊体化して治癒に専念するのが望ましい。
だが彼がそれをしないのは残されたおなまーえが一人でこの戦線から離脱できないからである。
今おなまーえとランサーが隠れられているのは、彼のルーン魔術のおかげだった。
おなまーえ程度の結界ではすぐにイリヤスフィールに見抜かれてしまったのだ。
魔術の流れが違うルーン魔術はなかなか看破しにくいようだ。
「ちょっとタンマ…」
ランサーは腹部を抑えながら呟く。
このルーン魔術もいつまでもつかわからない。
なのに敵は今もこちらを探している。
鬱蒼とした森の奥から足音が聞こえてくる。
「ランサー、ルーン魔術で治癒スキルは使えないの?」
「全力でやってるが、あいにく魔力が足りなくてな」
「…ごめんね」
彼の言わんとしていることがわかり、おなまーえは謝罪の言葉を述べた。
おなまーえは魔術師としては未熟者だ。
師もいなければ、誰かに使い方を教わったこともない。
魔術回路だけは優秀だが、その使い方は書籍などで独学に身につけたもの。
魔術師が一人で成長するのには限度がある。
そのためサーヴァントとの契約に繋げられる生きた魔術回路が少ないのだ。
魔力はあるのに回路が稼働していないため、ランサーに注がれる魔力は最低限の量でしかない。
ゆえに彼は己の力を存分に発揮できないでいる。
「謝んな。俺が勝手に深追いして勝手にやられただけだ。」
「……本当にごめん。私が未熟なせいで。」
「多少魔力が足らないくらいで遅れをとっちゃ英雄の名が泣くぜ」
「……」
「ったく」
ランサーは仕方がないとでも言うように、おなまーえを一瞥する。
落ち込んだ彼女に慰めの言葉は届かない。
彼女は慰められたとしても、もっと惨めな気持ちを抱くタイプだ。
バーサーカーの足音はまだ聞こえる。
今はこの状況を打破しなければならない。
そのためには最後の手段も厭うわけにはいかない。
「……隠したところでどうしようもないから言うぞ。正直なところ、通常の契約に比べて嬢ちゃんとの繋がりは弱い。」
「…うん」
「この状況もかなり絶望的だ」
迫る巨体。
それはもはや自然災害に等しいほどの威力。
もしランサーが倒れてルーン魔術が解けてしまえば、2人は殺される。