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第1章・君をいつの間にか3

「祥くん、このブースター部分、よう出来てるやん」

「まぁ、まだ模型の状態やけど」

直輝は、週2回は祥太郎の元へ訪れていた。

小学校の頃は、祥太郎と変わらない位に痩せていて、その大きな目だけギョロリと睨んでくるものだから、電化製品マニアというマニアックな趣味も相まって、周りの人間を遠ざけていた。

だが、中学生になった今は声変わりもして、縦にも横にも逞しくなってきたので、一部の女子に騒がれるようになっていた。

大きな瞳に少し上向きかけの鼻梁、細いが不機嫌なように下向きに引き締まった唇は、決して愛想の良い顔ではなかったが、間違いなく男前の部類だ。

「何か欲しい部品、ある?あるんやったら僕、買うてくるけど」

「ありがとう、直くん。まだ、模型も完成してないし、何がいるか分からん状態やねん」

「完成したら、祥くんが元気な時に、このロケット飛ばしてみよう。ドライアイス使うたら結構飛ぶと思うわ。形はこのままでエエと思う」

「直くんは優しいなぁ。学校、忙しいねんやろ?俺ん所にこない来てくれて、嬉しいけど自分の事、優先してな」

直輝は祥太郎の作ったロケットブースターの模型をいじりながら、目線を手元から離さずに応えた。

「……僕、優しくなんかないで。どうでもいい奴、無視するもん」

「そんなん言うて、科学部でも先生より信頼されてるし、なんやどっかの教授にも気に入られて、高校生や大学生の人らと一緒に研究してるて言うてたやん。引っ張りだこやん」

「あれは僕の趣味の電化製品を進化させたんがウケただけやし。仲良い訳と違うし。利害が一致しただけの関係や」

「でもこないだ、直くん、女の子に告白されてたって聞いたで」

「……あれは、あの子も科学部の子で、そんなんちゃうねん。一緒に電気の研究してるだけやねん。……ホンマにモテるって言うんは、理苑みたいな奴の事を言うんや」

直輝の口から、珍しく理苑の名前が出たので祥太郎は驚いた。

2人は幼稚園の時から何度も同じクラスになった事があるのに、何故か2人の間に流れる雰囲気は、いつも妙に険悪だ。

何度か仲良くならないものかと画策してはみたがどうにもならず、間にいる祥太郎も居心地が悪くて、結果、何となく2人が出会わないように時間をずらしてしまう。

「理苑、そんなにモテてるんや」

「そうやな。アイツの優しさって見境ないからな。男も女も先生も関係なくヘラヘラしてるから、常に周りに人がおるし。バスケ部の女子は、みんなアイツ目当てで入部したんちゃうかっていう話やし。あの顔でニコニコしてたら、みんなヤラれてまうねん」

「確かに理苑……外国人みたいに綺麗な顔やけど、良い奴やで?」

「……アイツ、最近、ここに来るんか?」

直輝のその言葉に、祥太郎の顔色が曇った。

「理苑、バスケ部、忙しいみたいやねん。一年生でたった一人のレギュラーらしいし。前程やないけど、時々、来よるよ」

「……僕が来てるから、来よらへんのかな」

「そんなんやないと思うけど……なぁ……何でお前ら、仲良くないん?」

長年の疑問だったが、それをはっきりと問うのは初めてだった。

「……理屈やないねん。アイツとは何か合わん。間におるお前には悪いねんけど。ゴメンな」

「構わへんけど……確かにやり難いかな。ホンマ言うたら、俺は仲良くして欲しい」

直輝は寸分も迷わず、首を振った。

「平和主義のお前には悪いけど、ゴメン」

これ以上、言っても無駄だと思った祥太郎は、ロケットの話題に戻した。
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