第3章・君のとなりに5
「祥太郎、ゴメンな?もう今日の仕事は終わったから着替えるの待ってて。一緒に回ろ?」
着替えてしまうのが勿体ない程にタキシードが似合っていたが、この姿のまま歩かれると、さらに女の子が群れて寄って来そうなので、申し訳ないが似合うとは言ってやれなかった。
ちょっとした街のようになっている大学は、見る所も多くて、まるでテーマパークさながらだった。
幼少の頃から変わらず、男女関係なくあちこちから声をかけられる理苑は、そのあしらいも上手くて、例え断りの言葉でも人に不快感を与える事はない。
もし俺が理苑の彼女だったら、こんな時、周りを気にせず腕を組めるのだろうかと思うと、今さらながらに『男同士』の肩身の狭さを感じる。
もしそんな事を理苑に言おうものなら、嬉しそうに『祥太郎、腕、組もか?』と真顔で言いそうで恐ろしい。
喫茶店の模擬店で一息つくと、理苑が改まって聞いて来た。
「祥太郎、こないだの変態野郎、どないなった?」
「あれから会うてないから分からんけど、これで終わりやないかも知れへん。俺の特許が結構なモンやったから仕事に問題はないやろけど、まだ迫ってくるかなぁ?あの人、しつこそうやし」
「何かあったら、絶対に言うてな」
「分かってる。いざとなったら、俺、転職してもいーし。仕事、頑張っといて良かったわ」
特許をいくつか持つ祥太郎の知識と技術は、転職の際も高く買われる。
今の会社は仕事面に不満はなかったが、パワハラやセクハラが横行し、人間関係としてはブラックだった。
「今日、ここの帰りに祥太郎の実家に寄ろう」
「実家?」
「オレも来年、卒業やし、祥太郎のおじさんとおばちゃんに、きちんと挨拶したい。……一生、一緒にいるって」
理苑の言葉に、祥太郎の胸が熱くなった。
俺は、理苑が好きなんだ。
理苑じゃなきゃダメなんだ。
理苑なしではいられないんだ。
改めて、そんな言葉が身体中を駆け巡る。
「……うん。ありがとう……」
祥太郎は、嬉し涙がこみ上げて来るのを、必死になって堪えた。
着替えてしまうのが勿体ない程にタキシードが似合っていたが、この姿のまま歩かれると、さらに女の子が群れて寄って来そうなので、申し訳ないが似合うとは言ってやれなかった。
ちょっとした街のようになっている大学は、見る所も多くて、まるでテーマパークさながらだった。
幼少の頃から変わらず、男女関係なくあちこちから声をかけられる理苑は、そのあしらいも上手くて、例え断りの言葉でも人に不快感を与える事はない。
もし俺が理苑の彼女だったら、こんな時、周りを気にせず腕を組めるのだろうかと思うと、今さらながらに『男同士』の肩身の狭さを感じる。
もしそんな事を理苑に言おうものなら、嬉しそうに『祥太郎、腕、組もか?』と真顔で言いそうで恐ろしい。
喫茶店の模擬店で一息つくと、理苑が改まって聞いて来た。
「祥太郎、こないだの変態野郎、どないなった?」
「あれから会うてないから分からんけど、これで終わりやないかも知れへん。俺の特許が結構なモンやったから仕事に問題はないやろけど、まだ迫ってくるかなぁ?あの人、しつこそうやし」
「何かあったら、絶対に言うてな」
「分かってる。いざとなったら、俺、転職してもいーし。仕事、頑張っといて良かったわ」
特許をいくつか持つ祥太郎の知識と技術は、転職の際も高く買われる。
今の会社は仕事面に不満はなかったが、パワハラやセクハラが横行し、人間関係としてはブラックだった。
「今日、ここの帰りに祥太郎の実家に寄ろう」
「実家?」
「オレも来年、卒業やし、祥太郎のおじさんとおばちゃんに、きちんと挨拶したい。……一生、一緒にいるって」
理苑の言葉に、祥太郎の胸が熱くなった。
俺は、理苑が好きなんだ。
理苑じゃなきゃダメなんだ。
理苑なしではいられないんだ。
改めて、そんな言葉が身体中を駆け巡る。
「……うん。ありがとう……」
祥太郎は、嬉し涙がこみ上げて来るのを、必死になって堪えた。